宿場町の趣を醸し出す街並みへ-。東海道五十三次、6番目の宿場町として栄えた「藤沢宿」をいま一度見つめ直し、培った歴史と文化を感じさせる街づくりを進めようと藤沢市が動きだす。交流施設を新設、橋を改修し、条例も制定する方針だ。
市は2014年度予算案に関連事業費の総額で1億1450万円を計上。同年度を含む3カ年で約5億円を見込んでいる。
鈴木恒夫市長は、「歴史文化を大切にしながら藤沢への郷土愛を高め、市の貴重な財産を次世代へ継承する取り組みを進めたい」としている。
交流施設は、「(仮称)藤沢宿場館」として新築する計画。14年度に設計し15年秋のオープンを目指す。時宗総本山「遊行寺」に近い市有地(同市西富1丁目、約500平方メートル)に、2階建て施設を建設する。1階に史料を展示するスペース、2階に集会所やイベントを開催する場所を設ける。総事業費は1億8千万円程度を見込んでいる。
宿場館建設予定地に近い、赤い欄干が特徴的な「遊行寺橋」の改修費として864万円を計上。老朽化の程度を調査するほか塗装し直し、シンボル的な施設の一つとする。
これらの観光拠点整備を踏まえ、JR藤沢駅から小田急江ノ島線藤沢本町駅までの約2キロ区間に、案内誘導板を設置する。この区間には江戸時代から残る蔵や、歴史的価値の高い商店の建物などが立地していることから、観光客に散策してもらう狙いだ。案内板の設置費用として3371万円を14年度当初予算案に計上した。
このほか、JR辻堂駅近くにある市外郭団体が所有する「ココテラス湘南」の7階に市が収蔵する浮世絵など千数百点を常設展示するスペースを整備する。総事業費は1億3500万円を見込む。同市では、20年ほど前から、藤沢市を題材にした浮世絵などを買い集めてきたが、展示する機会や場所がなく保管し続けていた。同じビルの6階には若手芸術家が割安で作品などを展示できる「(仮称)アートスペース湘南」も設け、新たな文化の発信拠点に位置づける。
14年度当初から施行する「藤沢市街なみ百年条例」では、良質な街並み形成を重点的に図る地区を「街なみ継承地区」として位置づけ、街並みの将来像などを示したガイドラインを作成することなどを定めている。強制力はないものの、地区指定について市民からの提案を受け付けることなども盛り込み、自主的な街づくりを促す狙いだ。
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