鎌倉市が昨年、「世界遺産ガイダンス施設(仮称)」の候補地として取得した土地と建物の整備計画が、形を変えて動きだしそうだ。世界文化遺産登録の推薦を取り下げたことで宙に浮いていた状態だったが、市は市民や観光客らが歴史を学び交流できる施設として、早ければ2015年度にも一部を先行オープンさせたい考え。4日に開会した市議会の常任委員会で報告、議会の了承が得られれば市役所内部に検討委員会を設置する。
施設があるのは、JR鎌倉駅西口から徒歩10分弱の扇ガ谷1丁目。計1万5380平方メートルの土地と延べ床計1748平方メートルの建物3棟は、一部を購入する負担付き寄付の形で、市が東京都内の文化財団などから15億円の寄付金とともに譲り受けた。
市が財団から申し出を受けたことを明らかにしたのは昨年6月。まさに世界遺産登録への取り組みを加速させていた時期だった。それまでは、市立御成小学校の旧講堂をガイダンス施設としていたが、登録への追い風にしようと、扇ガ谷1丁目に変更した。
しかしことし4月末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)からの「不登録」勧告により、整備計画は白紙に。「世界遺産」の名目は使えなくなり、「武家の古都・鎌倉」の21の史跡を紹介する展示構成も練り直すことになった。
約4カ月の“ブランク”を経て今回、市議会に示されたのは、ガイダンス施設にする予定だった2棟を交流施設にする案。
2棟は、バリアフリー化や空調、照明を改修すれば使用できる状態。旧野村総合研究所鎌倉研究センターに保管されている市所蔵の埋蔵文化財などを展示する予定という。
建物が寄贈され、4月からすでに清掃や警備の人件費、電気代などの維持管理費が発生しており、市の担当者は「設計や工事を簡素化するなどして一刻も早くオープンさせたい」と説明。残る土地や建物も活用した全体的な博物館構想も、14年度から進めていきたいとしている。
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