藤沢市が独自に運用している返済義務のない「給付型奨学金制度」を巡り、市は11日までに、大学の医学部・歯学部に限定した奨学生枠を新たに設ける方針を明らかにした。3月に死去した藤沢出身のソプラノ歌手白石敬子さん=享年(73)=の遺志を受けて設置する。
市は経済的理由から大学進学を諦めざるを得ない子どもたちを支援しようと、2017年4月から返済不要の「給付型奨学金制度」の運用を開始。今春、同制度を活用した学生1人が大学、2人が専門学校に進学している。
市は今回、医学部か歯学部へ進学する学生を対象にした枠を創設。同制度の中で「白石敬子奨学金給付事業」と銘打ち、実施していく。
白石さんは、日本人として初めてウィーン国立歌劇場の専属歌手として活躍。04年にがんと判明した後も治療を重ねながら、音楽活動に取り組んだ。今年1月には5千万円を市に寄付。その際、「音楽も大変でしたが、特に医学は経済的に大変ですので、その教育支援事業に役立ててください」とコメントを寄せていた。
市教育委員会によると、対象は▽年収400万円未満相当の世帯、もしくは生活保護世帯の子どもたち▽児童養護施設の入所者または退所者。原則として、高校2年の学年末における評点平均が3・7以上で、20歳まで申請可能とする。
対象者に選ばれ入学した学生には、入学準備金30万円のほか、学費月額6万円(いずれも限度額)を6年間支給する。対象者は1年度当たり1人。市は19年6月から募集を始める。