
政府は14日、米軍根岸住宅地区(横浜市中・南・磯子区)の日米共同使用について協議を始め、具体的な返還時期の調整を進めると明らかにした。返還の条件とされてきた池子住宅地区(同市金沢区・逗子市)の横浜市域での家族住宅建設は取りやめ、代わりに横須賀基地(横須賀市)などに独身者向け下士官宿舎といった新施設を整備する。同日の日米合同委員会で正式に合意した。
菅義偉官房長官(衆院2区)は同日の会見で「関係自治体に丁寧に説明する」とした上で、根岸地区に関し「返還に向けた手続きと建物の撤去などの原状回復作業を進め、3年程度で完了したい」と説明、2021年度にも返還が実現するとの見通しを示した。

新たな日米合意は、安全保障環境の変化に伴う在日米軍の態勢強化を受け、04年の合意内容を14年ぶりに見直した。根岸返還の動きは加速するとみられるが、条件変更と引き換えに別の施設建設を含む新たなパッケージが示された形で、具体的な内容次第では横須賀や逗子市などで住民の懸念が増す可能性もある。
根岸地区の共同使用は、土地利用者への引き渡しや跡地利用に向けた建物撤去、原状回復の速やかな実施が狙い。国有地と民有地が混在する同地区は地籍調査が未実施で土地境界が不明なため、本来は返還後の作業を前倒して早期返還につなげる。実際に共同使用する際は、日米で開始時期などを改めて合意する。

池子地区横浜市域の住宅増設取りやめは、都市計画道路(横浜逗子線)の整備や根岸地区の土地所有者に支払い続ける年間約21億円の借料負担といった課題を踏まえ、日米双方で一致した。根岸居住者が勤務地の横須賀基地周辺に転居するなどし、池子地区での住宅増設の必要性が薄れたといった背景もあるという。
一方、新たな施設整備として、▽横須賀基地の下士官宿舎(4棟、約700室)▽同基地浦郷倉庫地区の桟橋▽池子地区逗子市域の生活支援施設や運動施設、修繕用作業所、消防署▽鶴見貯油施設の消防署-を決定。政府関係者は、米イージス艦の追加配備などに伴う乗組員宿舎不足への対応や軍人・家族らの生活環境向上など「米軍駐留に必要な基盤整備」とするが、事実上の代替案とみられる。

池子地区横浜市域での増設は03年の日米基本合意で800戸程度とされ、未着工のまま04年に700戸程度、11年に385戸、14年に171戸と段階的に縮小していた。
一方、根岸地区には住宅385戸をはじめ教会や銀行などが点在していたが、15年12月に米軍人らすべての居住者が退去し、ほぼ無人状態になっている。
県内の米軍施設、整理に区切りか
日米両政府が14日に合意した米軍根岸住宅地区(横浜市)の返還時期を巡る協議スタートで、県内で返還方針が固まっていた米軍施設の整理は一定の区切りを迎えそうだ。東西冷戦の終結から間もなく20年。安全保障環境の変化や米軍再編の波を受けて基地の見直しが重ねられてきたが、今後の整理・縮小は見通しすら立たないのが実情とされる。