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【自民党総裁選】首相最長も視野 課題山積、さまよう世論

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2018年9月21日(金) 00:28

自民党総裁選を終え、記者会見前に笑顔で写真に納まる安倍首相 =20日午後、東京・永田町の党本部
自民党総裁選を終え、記者会見前に笑顔で写真に納まる安倍首相 =20日午後、東京・永田町の党本部

 安倍晋三首相が自民党総裁選で3選し、総裁任期はさらに3年延びた。満期まで首相を続ければ、歴代最長も視野に入る。だが、自らがつくり出したとも言える課題は山積みだ。反対も根強い憲法改正、ひずみが絶えない経済政策、そして社会にはびこる萎縮と「忖度(そんたく)」、同調圧力-。選択肢なき政治を前に、寄る辺なき世論はさらにさまよい続けようとしている。

憲法改正「筋通らず自己目的」


 自民党員になって30年。横浜市内で総合建設業を営む男性は「改憲派」を自認しつつも鼻白んでいた。「安倍首相の言う改憲を聞いてもまるで実感がない。中小企業経営者が自民党を支持している理由は経済対策をやるからだ」

 景気回復は道半ばだと感じる。「アベノミクスも出口が見えない。そんなときに膨大な政治的エネルギーを改憲に費やすべきなのだろうか」。働く人の雇用を支え、資金繰りや設備投資に余念のない多くの経営者たちにとって「憲法」そのものが遠い存在であり、その政治的優先度は限りなく低い。

 「安倍首相は憲法がどういうものかを全く理解していない」。憲法を知る「知憲」のための憲法カフェを全国各地で行ってきた神奈川県弁護士会の太田啓子弁護士は指摘する。

 安倍首相は先月、横浜市内で開かれた自民党の会合で「(憲法改正を)発議しないというのは、国会議員の怠慢ではないか」と述べた。

 太田弁護士は「憲法は主権者である国民のもので、議員や大臣など国家権力を行使する者を縛るもの。縛られている側が改憲発議をリードすること自体、おかしい」と問題視する。

 安倍首相は「9条改憲」を訴え、自衛隊違憲論を封じるため、1、2項を維持したまま、自衛隊の存在を明記し、「違憲論に終止符を打つ」とする。一方、国民投票により改正案が否決されても「自衛隊の合憲性は変わらない」と答弁してきた。

 太田弁護士は問う。「安倍首相の訴える改憲は全く筋が通っておらず、そんな改憲のために850億円ともされる税金を投じて国民投票を行う意味があるのか。改憲すること自体が、自己目的になっているのではないか」

アベノミクス「規律緩みツケ残す」


 「アベノミクスの前半は、大企業が勢いを取り戻す中、中小企業としてギャップがあった。だが、ここ1年ほどは、恩恵を感じている」。安倍政権の経済政策「アベノミクス」。プレス金属製造、機械加工のニットー(横浜市金沢区)の藤澤秀行社長(45)は評価する。好調な中小企業が増えている印象という。

 浜銀総合研究所の小泉司主任研究員も「全体的には合格点。財政・金融政策の効果で景気回復の実感は広がっている。株価は高水準で、企業収益も改善、雇用情勢も非常に良い」。一方で「当初目指した半分は実現したが、残りの半分には至らなかった」と指摘する。企業業績は賃金に波及せず、個人消費もなかなか上がらない。「本来、政策が目指した『経済を自律的回復軌道に乗せる』ことは、実現しなかった」

 金融政策や財政政策の副作用にも注目する。「大規模な金融緩和で低金利が続き、今後、海外景気が傾くなどのショックがあった際には、これ以上、対応できない状態。財政出動の増加も、社会保障費が増える中、後世にツケを残すことだ」と警鐘を鳴らす。政府の基礎的財政収支(プライマリーバランス)についても「改善しようという話をしていたはずが、どこかに行ってしまった。財政規律が緩んでいる」とする。

 安倍政権下の金融政策は、金融機関を悩ませてきた。県内金融機関の関係者は吐露する。「超低金利政策で融資しやすい状況ではあり、金融システムは安定している。だが、どこの金融機関も収益が圧迫されている」。現在、各金融機関の体力で経営は成り立っているが、赤字の例も出始めている。

 「続けばさらに体力が削(そ)がれ、地域にきちんとお金を出すことができなくなる恐れがある。元も子もないが、そうした局面に差し掛かっている。超低金利の出口を見極めて政策で誘導してほしい」と切に訴えた。)

忖度・同調圧力「個」の力で脱集団化


 「安倍1強」と呼ばれる政治状況は弊害も生んだ。安倍政権が徹底する「官邸主導」は政策の迅速な決定や遂行につながる半面、政治家や官僚らが官邸の顔色をうかがう歪(ゆが)みを生じさせた。森友・加計学園問題をめぐって何度も登場した「忖度(そんたく)」は、昨年の流行語大賞にも選ばれた。

 映画監督で作家の森達也さんは「強い言葉を発する独裁的な政治家が支持を強めている。これは全世界的な現象と言っていいかもしれない」と指摘する。自爆テロや移民受け入れといった異質な存在への恐れや不安が背景にあるという。

 日本で言えば、1995年に起きたオウム真理教による地下鉄サリン事件がターニングポイントだった、と考える。

 「個」の弱い日本社会は「集団化」を加速させ、同調圧力で動く集団内で異質な存在を排除し、さらに共通の敵を探すようになった-。それが安倍政権の支持率を押し上げる一因であり、忖度を生み出す根源とみる。

 弊害は足元にも及ぶ。鎌倉市では8月、改憲に反対する市民グループがデモ行進の集合場所として市役所前庭の使用を申請したところ、市が不許可を決定した。7月には川崎市教育委員会が、教員や研究者らが参加するシンポジウムの後援を撤回した。複数開かれるフォーラムの一つにすぎなかったものの、憲法改正「阻止」をうたっていたことが問題視された。

 改憲や原発、安全保障など世論を二分する問題で、とりわけ政権の政策を批判することが「偏向」「反日」とみなされる風潮が強い。政権の報道機関への「介入」も目立つ。

 安倍政治は続く。息苦しさ漂う社会の空気を変えるには何が必要か。

 森さんは言う。「集団は暴走しやすく、大きな間違いを繰り返す。同じ景色を見ても見え方は一人一人違う。(物事は)多面的であることに気付けば、自分の視点が持てるはず。個を強くする。私たちは、もっとわがままになっていい」 

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