
神奈川県二宮町で、自ら定めた条例に抵触する行為が横行していた。町には組合組織がなく、長年にわたって時間外手当の未払いがあったとみられ、県内労組関係者は「部署単位でという話は多いが、自治体丸ごと全部でという例は初めて聞いた」と驚いている。
町関係者によると、未払いの発覚のきっかけは職員1人の声。超過分の時間外勤務への手当が支給されていない実態を疑問視したことをきっかけに、町議会で取り上げられたという。
町によると、職員の時間外勤務は2016年度が月平均23時間。残業時間削減に取り組み、17年度は同19時間となった。一方で年間551時間の時間外勤務をした職員もおり、未払い分は相当な額に上るとみられる。
町には全日本自治団体労働組合(自治労)や日本自治体労働組合総連合(自治労連)の地方公務員労組が存在しない。自治労県本部の榎田利彦書記長は「組合員もいないので実態も分からなかった。あり得ないこと。組合がないから職員もいいようにされている」と憤りを隠さない。
時間外手当を巡る問題は二宮町だけに限らず、苦しい財政事情の多くの自治体に共通している。
手当が支払われるには上司の時間外勤務命令が必要だが、神奈川自治労連によると、年度初めなどにメモや口頭で上司が部下に残業時間の上限を指示。上限を超えた分は命令を伴わない“自主的”な残業と扱われるため、手当が支払われないケースがあるという。
神奈川自治労連の高橋輝雄委員長は「仕事は割り振るけど賃金は払わない。市民のためにという職員の善意につけ込んでいる」と批判する。
一方、2012年にさいたま市で79人の時間外勤務が千時間を超え、最大783万円の手当が支払われたことが判明。被災した自治体では緊急対応などに当たった職員の残業が急増し、自治体側にとって手当支給が重荷になっているケースも出てきている。