内装用のモルタル片が落下する事故により、平塚市博物館(同市浅間町)が8月27日から休館している。市は安全が確保されるまでしばらく休館とし、9月中の再開は困難な見通しだ。事故は老朽化が原因とみられるが、築40年を超す同館からは、改修や建て替えが追い付かない市内の公共施設事情が見えてくる。
事故があったのは同25日午後4時ごろ。2階から3階に続く職員用階段の天井から厚さ約1・5センチ、約1メートル四方ほどの化粧モルタルが、踊り場に落ちていた。同館は同日に施設内を目視で安全確認し、展示スペースにひび割れなどが見当たらなかったため、翌26日は通常通り開館した。
しかし、休館日の27日に再び点検すると、展示スペースの階段部分で天井のモルタルが落ちやすい状態になっているのが分かった。老朽化で、コンクリートの基礎部分からモルタルが剥がれ落ちたとみられる。
7月に始まった火星がテーマの特別展には1万4千人が来場していたが、会期を残して中止。イベントも野外の自然観察などを除いて全て取りやめた。業者と改修方法を検討中だが、澤村泰彦館長は「9月中の再開は難しい。めどすら立っていない」とこぼす。
市は今回の事故を受け、400ある公共施設の全1400棟について調査を開始したが、1976年オープンの同館をはじめ築年数を重ねた施設が多い。
高度経済成長期を中心に進んだ都市整備に合わせて建てられ、一斉に老朽化。築30年以上は全体の54%、築40年以上も24%に上る。市は改築について築76年以上、大規模改修については築38年を目安としているが、市博物館はこれまで改修は一度もない。
昨年3月には市公共施設再編計画を策定。崇善公民館と市民活動センターの機能集約など一部で統合が進む一方、市博物館は隣接する市中央図書館などの施設と再編統合する構想があるものの、具体像はまだ描かれていない。市担当者は「施設数が多く手が回らないのが現状。人口も減る中で、同じ施設を同じように建て替える時代ではもうない。施設を縮減させなければ維持管理も立ちゆかない」と説明している。