横浜市が新市庁舎への移転を機に、窓口業務のない部署の執務室を常時施錠する。市は理由に、多様化する個人情報や行政対象暴力への対応などを挙げ、「時代の移り変わり」とも口にする。市庁舎という建物に対する市の異例の対応に、市民は賛否が分かれ、全国の他の政令市は驚きを持って受け止め、専門家は批判する。

市は2013年3月、新市庁舎の整備基本構想を策定。現市庁舎の課題の一つに社会状況への対応を挙げ、「セキュリティー対策などの危機管理機能の強化」などが求められているとし、行政情報や個人情報保護を徹底するためのセキュリティーに配慮するなど「危機管理の中心的役割を果たす市庁舎」を基本理念の一つに掲げた。
その具体策は、16年3月策定の管理基本方針に盛り込んだ。段階的に立ち入りを制限してセキュリティーを高める「セキュリティー・ゾーニング」の考え方を導入。施設全体を五つのレベルに区分し、執務室は職員や議会関係者以外は立ち入れない「レベル4」に位置付けた。
市の担当者は、現市庁舎について「職員全員が離席すると、誰でも執務室に入ることができるという構造的な欠陥があった」と指摘。市民が頻繁に利用する窓口業務は区役所が担っているとした上で、「マイナンバーカードなど、以前に比べて個人情報をより多く扱うようになった。民間企業は建物を電子施錠し、受付で来訪者に対応している。情報漏えいが懸念されている中で、市役所が時代に取り残されるのは問題だ」と説明する。
安心か閉鎖か
市民はどう受け止めるだろうか。