住宅の敷地内に大量の廃棄物をため込む、いわゆる「ごみ屋敷」問題の解消に向け、横須賀市議会が議員提案で2017年度中の条例制定を目指すことになった。議会関係者によると、当事者の福祉的な支援の枠組みを整えることで、再発防止や周辺住民とのトラブル回避につなげたい考え。私有地への立ち入り調査や、最終的にごみを強制撤去できる行政代執行の必要性なども議論する。
保守系会派の市政同友会が「現行法令では対策が難しく、問題が長引くほど近隣住民の生活環境は損なわれる」などとして、条例制定に向けて議会内に「ごみ屋敷対策検討協議会」を設置するよう提案。14日の議会運営委員会で全会派が了承した。設置期間は18年3月末まで。
市が把握している「ごみ屋敷」はことし8月末現在で13件。市には10年以上前から、1年間に数件ペースで景観の悪化や臭気、虫の発生などを巡る苦情が寄せられているが、対処の根拠法令がないことから問題が長期化し、「なかなか減らない」(市担当者)のが実態という。
特に独居者が一戸建て住宅の敷地内にごみをため込むケースが多いとされる。市は現状、ごみ処理のルールをまとめたパンフレットを手渡すなどして当事者に理解を求めているが、市担当者は「所有者が『ごみではない』と言えば、なかなか処分に応じてもらえない」と話す。
提案者の市政同友会・加藤真道氏は「ごみを片付けるだけでは根本的な解決にならない。当事者を福祉の面からサポートする態勢づくりが必要」としている。
検討協議会の設置を受け、板橋衛議長は今春に包括的パートナーシップ協定を結んだ関東学院大からアドバイザーを派遣してもらう方針を明らかにした。住民に身近な問題でもあることから、市民の声を聴く場も設けたい考えだ。
「ごみ屋敷」対策を巡っては、横浜市が9月、県内自治体で初めて、行政代執行などを盛り込んだ条例を市会で成立させた。