
「『ハマ弁』は初めて。おいしかった」。1月下旬、横浜型配達弁当「ハマ弁」の手巻きずしを食べた中学1年の女子生徒(12)が話すと、他の生徒も「また食べたい」と続けた。
横浜市立鴨志田中学校(同市青葉区)で行われた「ハマ弁デー」。生徒が無償で実食できるほか、保護者向け試食会も同時に開かれ、1年生と3年生計158人中106人と保護者29人が注文した。
この日の参加率は高かったものの、昨年12月時点の市内全体の喫食率は1・3%。同月13日の定例会見で林文子市長は「3割を目指したい。私の気持ちとしては目標は5割」と意気込んだが、普及への道は険しい。
市は1950年代以降、人口増加に伴う学校建設に費用を優先し、長く家庭弁当の持参を続けてきた。だが、近年の働き方の多様化などに伴い用意が困難な家庭が出てきたため、給食も含めた学校昼食のあり方を検討。施設整備費や早期の全校展開、複数メニューへの対応ができることから、2016年夏にハマ弁を一部導入した。
全中学校での導入から1年以上たったが、今なお利用者が少ない理由はさまざまだ。生徒からは「おかずが冷たい」「みんな食べないから」と言った声が挙がる。鴨志田中の試食会では、保護者から「事前に注文やキャンセルをしなければならないので、使いづらい。当日朝にできたらいいのに」という意見も出た。
市は18年度当初予算案にハマ弁関連で7億6100万円を計上。普及に向け、新たな取り組みを期する。
4月からは他市のデリバリー給食並みに値下げする。ごはんとおかず、汁物、牛乳のセットは、現行470円が340円になる予定だ。
温かいおかずの提供も検討。現在、ごはんと汁物は65度以上の状態で器に盛られ、蓄熱材を利用して学校まで運ばれる一方、おかずは食中毒予防のため、85度以上で加熱後、おいしさと安全性の両立に最適という19度まで冷却する。
新たな方法として、病院で使う配膳車のようなカートを活用し、食中毒菌が繁殖しない高温を維持したまま運ぶ方法や、機械を使って学校で温め直す運用などが考えられている。経費や使い勝手などを検討し、新年度中の試行を目指す。
このほか、保護者不在などで昼食の用意が困難な生徒がハマ弁を無償で利用できるよう別枠予算で3千万円を盛り込んだ。
市教育委員会健康教育課は「ハマ弁は新しい取り組みなので、知らなくて当然。周知に力を入れて、保護者が納得する安全性、子どもが食べたいと思うメニューの確保に取り組みたい」と話している。
バランスも考慮
1月中旬に開かれた記者向けのハマ弁試食会に参加した。この日の主菜は「フライドチキン」か「あじフライ」のいずれかを選択。副菜は「野菜のトマト煮込み」「かぼちゃのバターソテー」「しめじとハムのマリネ」。白飯と「水菜ともやしのコンソメスープ」も付いた。
量は主食3に対し、副菜2、主菜1とバランスが考慮されている。日々、昼食にコンビニのおにぎりを選んでしまう記者には、野菜の多さがうれしい。
揚げる、煮る、焼く、漬ける-。調理法は実に多様だ。味付けも、トマト煮込みのうま味、かぼちゃの甘み、マリネの酸味といろいろな味が一皿に盛り込まれていた。参加した記者と「おいしかった」「量もしっかりある」と会話が弾んだ。
唯一気になったのは、おかずの温度。主食と汁物が温かいだけに、より冷たく感じた。ホカホカのおかずの提供が始まったら、改めてその変化を味わいたい。