老朽化した小田原市民会館(同市本町)に代わる市民ホールの整備事業で、市は26日、優先交渉権者に決定した鹿島建設と環境デザイン研究所2社の共同企業体(JV)と、事業協定を締結した。63億円の上限内で、1年をかけて設計、2年をかけて建設工事を実施。2度頓挫した市民会館の後継施設は、2021年秋のオープンを目指し、再々スタートを切った。
同日に市役所で締結式が開かれ、加藤憲一市長、鹿島建設横浜支店専務執行役員支店長の野村高男氏、環境デザイン研究所の仙田満会長らが出席した。
「この日を迎えられ、大変安堵(あんど)するとともに、これまでの経緯を振り返ると感慨深い」。あいさつでそう切り出した加藤市長は「シンプルで使いやすい、質の高いホールを実現し、芸術文化の創造を地域の活性化につなげたい」と強調。
野村氏は「研究所と力を合わせ、市民に満足していただける建物を工期内に引き渡すことを目指したい」と応じ、仙田会長は「小田原城とともに、小田原の新たな魅力的な顔となる拠点にしていきたい」と意気込みを語った。
市民会館の後継施設を巡っては、前市長時代の城下町ホールと、芸術文化創造センター(芸文センター)がいずれも白紙になった経緯がある。芸文センターは、15年7月の建設工事の入札が建設コストの高騰で不調に終わり、市は計画の見直しを余儀なくされた。20年東京五輪・パラリンピックが控え、今後さらなる高騰も見込まれるが、野村氏は設計・施工一括発注方式を採用していることを踏まえ、コスト抑制策として「設計から参加するので、できるだけ早く物(資材)を決め、早めに調達することを心掛けたい」と説明した。
協定では、事業期間を21年3月末までとし、完成期限を順守することや、19年1月までの設計事業(約1億6千万円)、21年3月末までの建設工事などの事業(約61億3千万円)の上限金額の範囲内で、提案内容を履行することなどを確認。同日に設計契約も結んだ。
JV提案の市民ホールは、日本の伝統的な民家の兜(かぶと)造りに似た形の、いぶし銀の大屋根が特徴。客席数1116席の大ホールや300席の小ホール、ギャラリー、中スタジオ、小スタジオ3室などを整備する。