
国の文化審議会は15日、1611年に完成した川崎市の「二ケ領用水」について、登録記念物とするよう文部科学相に答申した。多摩川周辺での最古級の農業用水の一つで、現在は親水空間として一部区間が整備され、地域住民に親しまれている。
二ケ領用水は全長約18キロで、同市多摩区から川崎区に広がる多摩川右岸の低地部を流れる用水。今回、答申を受けたのは、文化財登録について調整できた多摩、高津、中原、幸区内の計9・2キロ部分。市は7月末に同区間について、国に登録記念物の意見具申をしていた。
二ケ領用水の名前は、稲毛領と川崎領の二つの領地にまたがることに由来。徳川家康から江戸近郊の治水と新田開発を命じられた小泉次大夫吉次が用水奉行となり、1597年に着工、14年をかけて完成させた。
多摩区上河原と宿河原の2カ所から取水し、高津区久地で合流。その下流で4本の用水堀に分水して、さらに下流に導水していた。1939年には余剰水を使った国内初の公営工業用水道も設けられた。
市は「二ケ領用水は近世から現在まで川崎の礎を築いてきた用水。市としても活用事業をさらに進めていきたい」としている。
このほか、県内では、相模原市にある国指定史跡「川尻石器時代遺跡」について指定地の範囲を追加するよう答申。鎌倉市の「田中・大野邸主屋」、藤沢市の「玉屋本店店舗兼主屋」、秦野市の「旧芦川家住宅主屋(緑水庵)」、湯河原町の「富士屋旅館旧三号館」の4件を登録有形文化財にするよう答申した。
今回の答申で登録されると、県内の国登録記念物は計9件、国登録有形文化財(建造物)は計266件となる。