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IR・一問一答(8)ネット・平田氏

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2019年9月7日(土) 12:03

平田 郁代氏(ネット)

 IR誘致について白紙としてきた市長が一転、誘致にかじを切ったことに大変驚くとともに、議会や市民との合意形成のプロセスを軽視した判断であり、遺憾に思う。横浜の混乱は全国に報道され、注目された。市長には、この補正予算案について丁寧に説明いただく責任がある。検討中、あるいは「今後明らかにする」という姿勢ではなく、しっかりと答弁いただきたい。

 さて、補正予算案では、IR推進事業として、アドバイザリー支援、法務支援、インフラ交通アクセス、依存症の実態調査、広報関連など2億6千万円を計上し、アドバイザリー支援については、2020年度からの委託契約を想定した予算外義務負担の設定を行うとしており、IR関連予算は4億円に上る。誘致場所は山下ふ頭とされているが、この場所は既に再開発を名目に移転のための手続きが進んでいる。しかし、市長が港湾事業者の合意なしにIR誘致方針を表明したことで、港湾事業者はIR誘致に反対し、立ち退き拒否の強い意志を表明している。

 ふ頭の賃貸契約書では、契約解除には、公共の用に供するため必要が生じた場合などは契約を解除とあるが、IRがこれに当てはまるとは考えられない。今後の移転交渉の難航は明らか。移転補償の手続きについて、現在の進ちょく状況、現在の状況でIR誘致を推し進めるのか。市長の見解をうかがう。

 市長はIR誘致において、経済効果だけを強調する。一方、社会的コストについては全く言及していない。道路、上下水道、ガス、電気など含めたインフラ整備に莫大(ばくだい)なコストがかかることが容易に想定される。この見積額とこれらを横浜市が負担するつもりはあるのか、ないのか、うかがう。

 カジノ誘致に伴い、ギャンブル依存症に懸念の声が上がっている。予算案では、依存症実態調査として3千万円が計上されている。市が2017年度に依存症対策の現状調査を実施しているが、ギャンブル依存症の実態を把握するための調査はいまだ行われていない。本来、IR誘致表明の前にまず、実態調査を実施すべきでないか。市が予算案を立てるのに参考にしたという国立病院機構久里浜医療センターの調査は、あくまで疫学調査であり、無作為に抽出され、回答した4685人のうち、生涯において依存症が疑われる割合は全体の3・6%と推計される、という報告にとどまっている。

 北海道では、国のギャンブル等依存症対策推進計画に沿って医療機関、相談機関、当事者団体などを対象に丁寧に調査している。その結果、調査対象の精神科、医療機関の3分の1でギャンブル依存症に関する問い合わせがあったことや、依存症の治療が長期化傾向も報告されている。また、ギャンブルが多重債務だけでなく、虐待、犯罪などさまざまな社会問題につながっていることも分かっている。千葉市の対面調査では、その結果、当事者の実態を把握する難しさも報告されている。そこで、横浜市が実施する依存症実態調査とはどのようなものか。対象、範囲などについてうかがう。そもそも、この調査はIRを推進するための調査なのか。調査結果を踏まえて、IR誘致の再検討をする考えがあるのか、ないのか、うかがう。

 昨年成立したギャンブル等依存症対策基本法に基づき、政府はギャンブル等依存症対策推進計画を策定、今後、都道府県にも地域の実態を踏まえた独自の計画を策定することが求められている。本来、政令市の横浜市には、独自に依存症の予防教育、予防事業の実施、医療提供体制の整備、相談支援、社会復帰支援など具体的取り組みを提示すべき立場ではないか。神奈川県のギャンブル等依存症対策推進計画の策定状況について、うかがう。また、横浜市としての独自のギャンブル等依存症対策推進計画を策定するべきと考えるが、市長の見解は。

 市長はIRによる外国からの誘客効果を狙っていると言うが、株式会社日本政策投資銀行、公益財団法人日本交通公社(JTB)による2018年のアジア・欧米・豪訪日外国人旅行者の意向調査では、外国人が日本で見たいのは上位から桜、富士山、温泉、日本的な街並み。国内の観光客、訪日観光客も日本独自の景観を楽しみたいという意識が高く、宿泊先も日本旅館の人気が高いのが分かっている。記者発表資料では、インバウンド(訪日外国人)を含むIRへの訪問者数は、ディズニーリゾートより入場者が多い最大4千万人と試算されている。しかし、横浜のIR構想の施設は既に横浜にあるものや、外国人観光客のニーズともマッチせず、想定されている来場者につながるとも思えない。記者発表では、IR区内での消費額は年間4500億円から7400億円と試算されるというデータや、これまでにない経済効果・社会的効果を生むという市長の発言があった。先ほどの外国人旅行者の意向調査では、IRに関する設問もあり、IRのどの施設に行きたいかに、カジノと答えたのはわずか8%。市長は責任を持って発表された数字を説明できるのか。この場で、訪問者数、区域内での消費額、税など市への増収効果の積算根拠の説明を。事業者の情報提供に過ぎず、根拠の説明ができないのであれば、今後は数字を提示すべきでない。併せて見解をうかがう。

 私自身、病院看護師としてギャンブル依存症の深刻な問題に向き合う経験をした。多重債務で一家離散して命に関わる病気でも受診をためらう方、競艇場近くでけんかをし、意識不明で運ばれた方、所持金ゼロ円、まさに身ぐるみを剥がされた方、家族の苦悩を見た。少子高齢化社会、人口減社会の将来を見据えた成長戦略がカジノという発想には共感できない。IR全体の維持・継続をさせるためには多大なコストが必要で、カジノで負け続ける人を想定しているからこそ、カジノ抜きのリゾート施設が構想できないのではないか。カジノの生み出す利益は、誰かの損失の上に成り立つもので、その損失は経済のみならず、心身の健康に関わる場合もある。市が率先し、誘致することはあってはならない。

山下ふ頭の移転交渉の進ちょく状況は。

 (市長)山下ふ頭の進ちょく状況と、今後の見通しだが、山下ふ頭の民間倉庫は24棟のうち、これまで11棟の移転補償契約が完了している。移転協議を進めるには、事業者、関係団体の皆さんのご理解、ご協力が大切。引き続き丁寧に理解求める。

IRの社会的コストについては全く言及していない。道路、上下水道、ガス、電気などを含めたインフラ整備に莫大なコストがかかることが容易に想定される。この見積額を横浜市が負担するつもりはあるのか。

 (市長)インフラ整備費にかかる社会的コストですが、事業者ごとにさまざまな計画案が想定されている。それに伴うインフラ整備もさまざま。今後、各事業者の計画案が示されるので、市で行う調査を踏まえて検討する。またインフラ整備費の官民の負担についても、実施方針を策定する中で明確化する。

横浜市が実施する依存症実態調査とは、どのようなものか。調査結果を踏まえて、IR誘致の再検討をする考えがあるのか。

 (市長)市の依存症実態調査について。国が平成28年から29年にした全国調査と同様で、横浜市内におけるギャンブル依存症が疑われる割合を調査する。具体的には、市内在住の成人3千名を対象に、無作為抽出によるアンケートを行う。実際調査を踏まえたIR誘致の再検討についてだが、世界最高水準のカジノ規制と言われるIR整備法や、ギャンブル等依存症対策推進計画などにより、具体的な依存症対策や関係者の役割分担が示されるなど、依存症を増やさない環境が整ってきた。まずは実態調査を行い、パチンコなどに起因した疑いのある人の数値を把握して、その上で市に適した依存症対策を検討し、速やかに新たな対策を進める。方針を再検討することは考えていない。

県のギャンブル等依存症対策推進計画の策定状況は。また、横浜市としての独自のギャンブル等依存症対策推進計画を策定するべきと考えるが、市長の見解は。

 (市長)県の基本計画策定状況は、国の説明会が開かれるため、検討中とうかがっている。市としての計画は、相談支援、普及啓発などの取り組みを充実させるなど主体的に取り組む。実施方針、区域整備計画を策定する中で、県と調整しながら依存症対策を立てる。

市への増収効果の積算根拠の説明を。

 (市長)IRの経済的・社会効果についてだが、IRの観光振興、地域経済の進行、財政の改善などこれまでにない効果が見込まれる。市の諸課題に有効。今回の経済効果の算出にあたり、昨年度には明らかになっていなかったIR整備法施行令を踏まえて、改めて情報提供をいただいた。監査法人と市で妥当性を確認し、運営時の波及効果などについて算出した。これらの数値については事業者から公表しないことを前提として提供いただいたため、お示しできない。

8人の質問と、市長の答弁の詳報 ⇒ IR誘致、一問一答 横浜市会で論戦

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