厚木市はこのほど、2016年度の市立病院事業会計決算書をまとめた。単年度赤字額は前年度より約3億円増え、過去2番目に多い16億3千万円になった。建て替え事業が11月にようやく完了する運びとなったが、地中廃材や大量のアスベスト(石綿)の対応に追われる「不測の事態」(同院)に相次いで見舞われた。その影響で撤去費がかさみ、工期も約1年3カ月延びて経営状況は悪化した。
決算書によると、16年度の事業収益は90億3700万円で前年度比3・6%の増。事業費用は106億6700万円で6・5%の増。差し引きで赤字相当は16億3千万円になった。
単年度赤字は5年連続。累積赤字は42億800万円に膨らんだ。12年度に始まった建て替え事業に伴う企業債や他会計借入金などの負債が増えたのが要因。一般会計から前年度より7800万円少ない10億1700万円を繰り入れた。
決算に対する市監査委員の審査意見書は前回同様に「今後も注視すべき経営状況にある」と指摘した。
建て替え事業は、03年に県から無償譲渡された旧県立病院の設備が老朽化したために市が計画。しかし、不測の事態は着工直後から発生した。
12年10月、敷地内の地中からコンクリート片や配管類などの廃材が見つかり、工事が一時中断。撤去に約9カ月、約6億円の出費を強いられた。
市は完成遅れによる損失を含めて、県に約13億円の賠償を求めたが、調停は不成立に終わり、小林常良市長が提訴断念の政治的判断を下した。
さらに、17年1月に旧病棟の解体に当たり、石綿含有材が当初の見込みより多く存在することが判明。4~5月、最後段階の外構工事の事前調査で土壌汚染も検出され、全面オープンが11月末に再度延期になった。
市は第2次病院経営計画(17~21年度)を今年3月に策定。建て替え事業については不測の事態で総事業費が当初の約102億円から約146億円に増加した。このため、財政的に厳しくなり、今後5年間は大変重要な期間になるとの見通しを示した。
第1次計画(12~16年度)で設定した19年度の黒字転換目標も、第2次計画では23年度に先送り。ただ、今回の設備更新により医業収益増が見込まれ、減価償却費などを除いた収支の黒字化は17年度の達成を目指すとした。同院経営管理課は「独立採算の原則の下、建て替え効果を発揮して『市民の皆さまに信頼される医療の提供』の基本理念を実現するため、さらなる経営改革を図っていきたい」と説明している。