
あらゆる差別を禁じ、根絶を図る条例の制定を進めている川崎市の福田紀彦市長は19日、ヘイトスピーチを規制するため、条例に刑事罰を設ける考えを明らかにした。表現の自由に配慮した仕組みを含め、近く素案を市議会に示す。成立すればヘイトスピーチに刑事罰を設けた全国初の条例になる。
市議会本会議で橋本勝氏(自民党)の代表質問に答えた。
福田市長は「あらゆる差別を許さない決意を持ち、差別の根絶を目指す。多様な人々が暮らす市にふさわしい条例になるよう市民の総意でつくりあげていく」と決意を表明。実効性を確保するため、「表現の自由に留意しつつ、一定の要件に該当する差別的言動の禁止に関する規定をはじめ、当該言動を繰り返し行う者に対しては行政刑罰に関する規定を設ける」と述べ、刑事罰を導入する考えを明らかにした。
市は、刑事罰の内容や表現の自由を過度に規制しない仕組みを盛り込んだ素案を6月議会中に開かれる市議会文教委員会に示し、市民の意見を募るパブリックコメントを経て、12月定例議会での成立を目指す。
◆ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士の話 川崎市が国に先駆けて刑事罰を導入しヘイトスピーチを犯罪とする決断をしたことは、国際人権諸条約の要請にも合致し、日本における反差別の取り組みを大きく前進させる画期的なものだ。
3年前に施行したヘイトスピーチ解消法には禁止規定も制裁規定もないため、悪質な差別主義者たちのヘイト街宣などを止められない。深刻な被害を止め、防止するには禁止規定と刑事罰の導入が不可避だ。行政罰にとどまれば最高額でも5万円の過料しか科せず、実効性は不十分だ。
表現の自由も無制限ではなく、ヘイトスピーチが許されないことは解消法前文で規定している。過度の規制や乱用を防止するため、重大な場合に限定し、具体的で明確な要件で適正な手続きを保障すれば、違憲性を回避できるはずだ。