
「どうか3期目もお任せください」。選挙戦が始まった16日、炎天下の元町商店街(横浜市中区)で現職の林文子(71)が演説を終えると、買い物客や商店主らと握手を交わした。「応援しています」と駆け寄りスマートフォンで記念写真を求める人も。応援に駆け付けた知事の黒岩祐治がうなずく。「知名度は抜群。何より失政がないのは見事だよ」。林は「前回(2013年)の選挙と反応が全然違う。写真を撮ってくださいと言われ、慣れていないから恥ずかしいくらい」と笑みを浮かべる。
これまで街頭でマイクを握ったのは20回程度。他2人の候補者と比べて少ないが、週末は対話型の演説で、公約を分かりやすく説明するだけでなく、飼い猫の話を織り交ぜるなど人柄もアピール。平日は支援・業界団体のあいさつ回りや集会での演説をこなす。
林が2期8年の実績の一つとして掲げるのは待機児童ゼロ。21日には青葉区の認可保育所を訪れ、保育士や保護者ら約20人と懇談した。子どもを通わせる父親(38)は「0歳で預けられたので妻が仕事を辞めずに済んだ」。園長は課題とされる保育士確保策で短時間勤務制度など園で導入している多様な働き方を説明した。園児をあやしながら耳を傾けていた林は「待機児童対策に力を入れてきた。どの話も励みになった」と自信を見せる。
自民、公明党や地元経済界など強固な組織の支援を受け、神奈川新聞社が実施した電話世論調査で優位な情勢とされている。一方、市長選で他2候補が争点として主張しているカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致や中学校給食に関して、街頭や支援者集会で直接問いただされる場面も複数回あった。
23日の仙台市長選では、与党系候補が野党共闘の前民進党衆院議員に敗れるなど、陣営は“逆風”に気を引き締める。「林の評判は非常に良い。しかしその油断が一番怖いということを最後まで忘れてはならない」=敬称略
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30日投開票の横浜市長選が終盤に近づいてきた。猛暑の中で市内を駆け巡る候補者3人の日々を追った。