
藤沢市が2016年4月に開設した「ふじさわ宿交流館」(同市西富)の建設工事を巡り、5日の市議会本会議で、当時の市議会副議長が工期の延長ができるよう当時の副市長に求める「口利き」があったとして、政治と行政の在り方を問うやりとりがあった。
取り上げたのは代表質問に立った酒井信孝氏(市民派クラブ)。「裁判資料では口利きを試みたことが陳述されている。公権力の私物化がまかり通っているのだとすれば正さなければならない」と追及した。
市によると、工事を受注した市内の建設会社が工期までに完了しなかったため、市は契約違反として遅延損害金の請求と6カ月の指名停止処分を下した。一方、会社側は16年11月、「不当な処分で公共工事の入札に参加できなくなる不利益を被った」と、市に損害賠償を求めて提訴した。
横浜地裁は18年8月、「市は建物だけでも間に合わせるよう最低限の要望を述べただけで、遅れ自体を容認したものではなく、会社が免責される事情はない」と会社側の請求を棄却。今年1月の控訴審判決でも棄却され、判決が確定している。
酒井氏が問題としたのは、会社側が提出した証拠資料の一部。当時副議長だった塚本昌紀氏(公明)の署名が入った陳述書では、会社側から工期について相談を受けたことや、それを受けて当時の藤間豊副市長と面談したことなど一連の経緯を説明。さらに「市は会社に対し、たとえ工期が間に合わない事態になっても何らかの事務手続きで対応し、契約不履行とはしないなどと口頭で私を介して約束していた」「一方的に(同社を)処分するのは理不尽」と主張していた。
酒井氏は陳述書を議場で提示した上で、「こうした議員の口利きによる無理筋がこれまでまかり通ってきたのではないか」と指摘。これに対し、市は「副議長とのやりとりは、副市長という立場で意見交換したにすぎない」と答えた。
塚本氏は神奈川新聞社の取材に対し、自身の陳述書と認めた上で「議員は、納税者から要望や相談を受ければ誠実に対応する。今回はたまたま公共工事の契約行為に基づく事業者だった」と説明している。