
「完全に、行き詰まった状態」。児童52人が在籍する放課後児童クラブ(学童保育)「西神奈川学童ハッピースマイル」(横浜市神奈川区)を運営する保護者は、思わずため息をついた。移転先がこの数年、見つかっていないからだ。
市は条例や要綱で、児童一人当たりの面積や耐震基準を定めている。各クラブは児童1人当たり1.65平方メートル以上を確保しなければならず、1981年の建築基準法改正前に建てられた物件で運営する場合は所有者に耐震補強をしてもらうか、移転するかしなければならない。
ハッピースマイルは面積の基準を満たしていない上、入居するビルには同法に適合していることを証明する「検査済証」がない。
市は2019年度当初予算案で、放課後児童クラブ事業に前年度比約700万円増の約27億3400万円を計上。耐震不適合を理由に移転が必要な40クラブに対し、移転準備補助金の上限を300万円に増額するなど対策を拡充した。
市は耐震適合を努力義務と位置付け、19年度末までの5年間の経過措置を設けた。それまでに移転できなくても「すぐに運営支援を打ち切ることはない」とするが、終了後の対応は「現状では白紙」。まずは移転支援に注力する、と繰り返す。
だが、別の課題を抱えるクラブもある。「あい・しらね」(旭区)は、条例が施行された15年4月1日時点では面積の基準を満たしていた。だが入所数の増加に伴い、今は同じマンションの3室を利用するが、移転準備補助金の対象外。家賃補助も1室分(15万円)しか認められず、2室分の家賃は利用料で賄っている。
横浜学童保育連絡協議会の小森伸二事務局次長は「今回の予算拡充は評価する」としつつ、「より柔軟な対応と強力な後押しを市には求めたい」とする。