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空き家で芸術家村を 谷戸再生へ横須賀市が取り組み

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2019年1月21日(月) 01:32

取り壊し予定だった市営住宅が芸術家の受け皿になった
取り壊し予定だった市営住宅が芸術家の受け皿になった

 横須賀市は、山あいに谷が入り組んだ谷戸地域に芸術家を呼び込み、「アーティスト村」をつくろうと取り組んでいる。取り壊す予定だった古い市営住宅を住居兼工房に改修。昨年12月には第1号の陶芸家が移住した。市は芸術活動を通じて地域住民との交流を促し、空き家が課題の同地域を活性化させたい考えだ。

 JR田浦駅から狭い路地を徒歩で20分ほど登った山あいの田浦泉町に、平屋の古びた長屋群がある。1960年に建てられた市営住宅「温泉谷戸住宅」で、廃止決定後、3年前から空き家になっていた。

 市は芸術家の受け皿用に7棟18戸を残し、建物改修費など約1千万円を2018年度予算に計上。昨秋に畳敷きだった室内の床を板張りにし、新しいエアコンに替えるなど内装を一新した。市と包括協定を結ぶ関東学院大学の学生らも工事に一肌脱いだ。

 市美術協会から推薦されて昨年12月1日、横浜市南区内から移り住んだのが、陶芸家の薬王寺太一さん(43)だ。居住用に1戸分(約30平方メートル)を賃貸し、工房や教室として共有スペースも利用している。


土器を製作する薬王寺さん=横須賀市田浦泉町
土器を製作する薬王寺さん=横須賀市田浦泉町

 森林に囲まれ、裏手の小川にはホタルも生息する静かな環境。山梨県や佐賀県の窯元で修行を積んだ薬王寺さんは、移住を決めた理由について「窯で焼き物ができる場を探していた。下見に来て、ここは一目ぼれだった。自然を感じながら創作に打ち込めるし、古い建物も好きだった」と説明する。

 高温で焼ける「穴窯」を近くの屋外にれんがを積んで設け、陶芸教室などのイベントも開きたい考えだ。「焼き物は子どもからお年寄りまで誰にでもでき、窯の火を囲めば、コミュニケーションも深まる」と期待する。

 地元の田浦町二・泉自治会の住民らにも温かく迎えられ、新年会を一緒に開いたり、散歩途中の住民が工房に立ち寄ったりするという。「住民の皆さんが本当に良くしてくれて、うれしい」とほほ笑む薬王寺さん。「自然と都会的な営みの間にある緩衝地帯が谷戸。都会に利便性を追い求めた時代が終わり、これから谷戸の良さが見直される気がする」と感じている。

 谷戸は谷が入り組んだ横須賀特有の住宅地域。道が狭く、坂が多いなど交通の便が悪く、近年は空き家も増えている。「アーティスト村」による再生は上地克明市長の公約で、市はさらに芸術家の誘致を進める方針。

 
 

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