ごみや落書き、放置自転車などが目立つようになったJR川崎駅東口駅前広場で、川崎市は警備員によるマナー啓発のパトロールを始めた。同駅北口通路の広告事業で得た収入を財源にした試み。市は今後、同広場などでの広告規制を緩和する社会実験も予定しており、広告掲出でにぎわいを創出するとともに、同駅周辺の美化につなげる好循環を生み出したい考えだ。
8日午後5時すぎ、市から委託を受けた警備会社の警備員2人が駅前の喫煙所周辺でポイ捨てされた吸い殻や空き缶を拾い始めた。瞬く間にビニール袋がいっぱいになる。中には脱ぎ捨てられたセーターなども。ごみを拾う制服の警備員を見て、喫煙スペースの外でたばこをくわえていた人たちが、きまり悪そうにスペースの中に入っていく。
次に警備員が向かったのは、リヤカーに野菜や果物を載せてたたずむ男性の元。警備会社の部長職にある男性が「警察の許可は取っていますか?」と声を掛けた。リヤカーの男性はあいまいな返答に終始。警備員が少し離れた場所から見ていると、客らしき人が来ても動こうとしない。警備会社の男性は「声掛けだけでいいんです。繰り返すことで違法行為を抑止できます」と話した。
自転車に乗っている人を見掛ければ「降りて押して歩いてください」と呼び掛け、路上ライブをしている人にもさりげなく声を掛け、CDなどの販売行為がないかを確かめた。
市拠点整備推進室によると、同駅前広場はバスターミナルなどの整備から7年が経過し、ごみの散乱や落書き、放置自転車のほか、無秩序な販売行為などが目立つようになってきているという。
啓発パトロールは3月末まで毎日、午後5~11時に続け、ポイ捨ての多い場所や路上喫煙、違法駐輪などの実態を調べる。市は調査結果を踏まえ、駅前広場の管理ルールの策定に向けた検討を行う方針だ。
同駅周辺では、市がサッカーJ1の川崎フロンターレと年額600万円で北口通路の壁面広告を契約。北口西バス乗り場と北口通路西側デッキのネーミングライツ(命名権)でも、商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」を運営する三井不動産と年額500万円で契約を結んでいる。今回の啓発パトロールは、北口通路の広告収入を財源にした。
市は昨年12月、屋外広告の禁止地域、禁止物件でも公益性があれば広告が出せるよう市条例の一部を改正。禁止地域となっていた川崎駅の駅前広場で、屋外広告を掲出する社会実験を9月から行う。
市拠点整備推進室の担当者は「市の玄関口にふさわしい美しさを保ちながら、にぎわいを生み出し、駅前のイメージアップにつなげていきたい」としている。