12年ぶりの選挙戦となった三浦市長選は、現職の吉田英男氏(61)が新人の飯田俊行氏(68)を破り、4選を果たした。「現職圧勝」が大方の予想だったが、結果は8571票対6262票のわずか2309票差。3期12年の成果が有権者には必ずしも実感されず、知名度で圧倒的に劣る飯田氏が善戦し、吉田氏には厳しい4期目の船出となった。
投開票日の18日夜、京急線三浦海岸駅前の吉田氏の事務所には多くの支持者らで埋まっていた。午後10時の開票速報は「吉田氏5500票対飯田氏4500票」。思いのほかの接戦に、居合わせた男性は「相手がこんなに取るとは、と驚いた」と話した。
同10時15分ごろ、吉田氏が事務所に登場。支持者らから大きな拍手が湧き起こるものの、笑顔はない。当選確実の報に事務所内は歓喜に沸いたが、吉田氏の表情は硬かった。
「圧倒的勝利」を目指して吉田氏の陣営は盤石の態勢を築いていた。地元選出県議や市議8人が応援に回り、4月8日に開かれた市政報告会には地元経済団体のトップらも顔をそろえた。会場となった三浦市民ホールの450席は埋まり、立ち見が出るほど。今月11日の出陣式には国会議員7人も駆け付けた。
応援した市議の一人は「前に進んではいるが、3期12年で三浦市が良くなったと感じられない市民が多かったのでは。相手陣営によるネガティブキャンペーンも影響した」と分析。支持者の男性は「態勢の違いを考えたら、完全に負け」と切り捨てた。
一方の飯田氏陣営。「アリと象の戦い」と位置付け、市内200カ所以上を回る“どぶ板選挙”を展開し、無党派層などの取り込みを図った。
陣営幹部は「(投開票日当日に)雨が降らなければもっと僅差になったのでは。地盤もない新人に6千人以上が共感してくれ、立候補したかいがあった」と振り返る。
吉田氏勝利の前評判に加え、政策論争が盛り上がりを欠いたことで、投票率は38・90%にとどまり、過去最低を大幅に更新。12年ぶりの選挙戦は、地域を二分するほど政争が激しかったかつての面影はなかった。
市民は選挙結果をどう見ているのか。40代の水産卸売業の男性は「財政状況が良くないのは明らか。何かを変えなければという閉塞(へいそく)感がある」。30代の農家の男性は「マンネリを感じ、違う人が市長になった方が三浦市は良くなると思ったのでは」と指摘する。
現職支持のある男性は選挙戦をこう総括してみせた。「引き締めを図るという意味では、この結果は良かった。4期目で成果を出し、見返してほしい」