神奈川県は2010年度から、生活保護世帯の子どもたちを支援するモデル事業に取り組む。保健福祉事務所に、元教員や児童相談所の元職員らによる「生活保護・子ども支援員」を新たに置き、家庭訪問などを通じてサポート。支援プログラムづくりに取り掛かる。全国的にも珍しい試みという。
県によると、県全体の生活保護の受給世帯数は2010年1月現在で9万2384世帯(政令市含む)。前年同月に比べて14・1%増と、厳しい雇用情勢を受け増加傾向にある。金銭的な理由から学校を退学・中退したり、進学をあきらめたりする子どももおり、世代間の「貧困の連鎖」が懸念されている。
県生活援護課では「生活保護世帯では、進学や進路への不安を持つ子どもや、不登校、引きこもりなどの課題を抱える子どもは少なくない。金銭給付だけでなく積極的な教育支援が必要と考えた」と話す。
県内6カ所ある保健福祉事務所に「生活保護・子ども支援員」を1人ずつ配置。ケースワーカーとともに家庭訪問などを通じて、退学や中退しない方法や進学・就職について一緒に考えたり、親の子育ての悩みなどを受け付けたりする。
相談を通じ、生活保護を受けるに至った経緯など詳しく調査。10年秋ごろからは調査結果を基に、学識経験者らを組織し、子どもの健全育成に向けたプログラムの策定を進める。事業費は約1130万円。
生活保護を所管しているのは、大部分は市のため、今回の事業の対象となるのは、09年12月現在で、県が受け持っている13町1村の1966世帯のうち、0歳から高校生年齢までの子どもがいる191世帯。限られた数となるが、県生活援護課では「生活保護世帯の子どもを支援するモデルを示すことで、県内各市の取り組みを促したい」としている。
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