自民、民主、公明など30人以上の市議に加え、地元選出の県議や高い人気を誇る小泉純一郎元首相、連合系労組、業界団体…。圧倒的な組織の支援を受けた現職の蒲谷亮一氏に対し、ほとんど組織を持たない吉田氏を勝利に導いたのは蒲谷市政に不満を持つ有権者の大きなうねりだった。
政策本位の選挙戦を展開した吉田氏の主張の中核は3点。(1)36年間続いた官僚市長からの脱却(2)抜本的な行財政改革(3)市民の声を大切にする市政の実現―だった。そのシンプルさが、組織に縛られない有権者の賛同を得た。通算1200日を超す駅立ちや自転車での遊説が示す33歳の若さと行動力もプラスに働いた。
特筆すべきは吉田陣営に集まったボランティアの力だ。大学生からお年寄りまで、利害関係のない市民が勝手連的に参加し、街頭でのビラ配りや事務所の手伝いなどを黙々とこなした。その活動が一般有権者の共感を呼んだともいえる。組織に頼らない「個」の勝利は、他自治体の首長選にも影響を与えるだろう。
一方、蒲谷氏は1期4年間で433人の職員削減をはじめとする行財政改革に取り組んだ実績を強調し、市政運営の継続を訴えた。しかし、手堅い運営手腕の半面、アピール力に欠けるとも指摘され、地元に大きな影響力を持つ小泉元首相の全面的な支援を受けながら有権者の支持を得られなかった。
新たなかじ取り役の吉田氏にとって、最大の課題は大多数の議員が選挙で蒲谷氏を支援した議会との関係だ。今後の市政運営を左右する大きな鍵となる。
【】