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特定秘密保護法案を問う(11):政治アナリスト伊藤惇夫氏「抑止力なき権力は暴走する」、引き込まれた非力野党

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2013年11月28日(木) 09:53

政治アナリストの伊藤惇夫氏
政治アナリストの伊藤惇夫氏

特定秘密保護法案の参院での審議が始まった。衆院通過を数の力で押し切った自民、公明の両与党、修正協議で安易な妥協を重ねたみんなの党、日本維新の会の一部野党-。その在りように政治アナリストの伊藤惇夫氏は警鐘を鳴らす。「抑止力のない権力は必ず暴走を始める」。与野党の運営に携わり、40年にわたって政界を見続ける氏の指摘から、議会制民主主義の劣化が浮かび上がってくる。

-みんなも維新も競うように修正案の合意に走った。

「与党にケンカを売っても勝てないのであれば、そこにすり寄り、あわよくば政権入りしようという思惑が透けて見える。それができないまでも、主張をのませたことを実績とし、存在感を示したいのだろう。与党にいい顔をしているようでは、もはや野党とは呼べない」

-非力な野党が都合よく利用された。

「いまほど野党が与党をけん制できない時代はない。衆院で多数を占める与党ははなから数の力で押し切れた。それでは世論が反発する。ならば野党を引き込み、強行したイメージを拭い去ろうとした。みんなと維新がすり寄ってきたことを含め、やりたい放題、思惑通りだ」

-対案を示した民主党の動きも鈍かった。

「あらためて野党の軸になり得ないことが明らかになった。現在の野党に、いずれは自民党の存在を脅かし、凌駕(りょうが)する可能性を見いだせる党はあるだろうか」

■歯止めが役目

-修正案では秘密指定期間が最長60年になり、設置を検討することになった第三者機関も首相が第三者的立場で関与する。

「どう見ても後退した。行政のトップである首相の関与に至っては、冗談にもならない」

-政府が都合の悪い情報を隠すといった恣意(しい)的な運用の懸念は消えていない。

「そもそも『検討』という言葉は官僚用語で、『やらない』か『骨抜きにする』のどちらかでしかない。官僚支配国家になる恐れが強いという点から法案には反対だ。官僚がいかに拡大解釈の名人かということは、震災復興予算の使い道を見ても明らかだ」

-安易な修正合意の結果、野党が役割を果たせていない。

「特に衆参両院で与党が圧倒的多数を占めた場合、与党の主張や方針の矛盾を徹底的に突くのが、野党に求められる一番大事な役割だ。野党がその役割を発揮できなくなったら、誰が政府の暴走を止めるのか。権力というのは抑止しなければ、必ず暴走する」

-自身は自民党を振り出しに新党の結成にもかかわった。

「野党は駄々っ子でいい。55年体制の自民党と社会党は永久与党対野党第1党というすみ分けができていた。社会党は自民党をけん制し、自民党も無視できなかった。極論を言えば野党は与党を批判してさえいればいい」

「新党が消えていったのは自民党を軸に置いてしか存在できなかったからだ。独自のビジョンを持つべきだった。自民党という光を放つ恒星があり、新党はその光を反射してしか生きられなかった。その失敗を、みんなも維新も考えるべきだ」

■有権者の責任

-国会の存在意義が問われている。

「与党が数で押し切り、一部野党がそれを後押しする。これでは与党が法案を出した段階で成立したも同然だ。法案の修正も各党間の協議で行われ、国会審議で修正されたわけではない。それでは国会は、法案を成立させるための単なるセレモニーにすぎない」

-審議の場は参院に移った。

「与党が多数を占める参院自体が自立的に法案の修正に動くということは考えられない」

-7月の参院選で自民党が有権者に訴えたのが「ねじれの解消を」だった。

「ねじれがあることでむしろ国会の存在意義が高まる面もある。与野党が意見をたたかわせ、法案の修正が図られる。民主主義は本来、手間暇が掛かるものだ。迅速さを欠くかもしれないが、結果的にバランスの取れたものを作り出すことになる」

-その重しがなくなった。

「だとすれば世論を盛り上げ、それを抑止力とする以外にない。いまの政治状況も有権者が投票した結果だ。(選んだ政権があらぬ方向へ進みだしたのなら)有権者が責任を持って声を上げるべきだ」

◆いとう・あつお 学習院大法学部卒。出版社を経て1973年から自民党本部に勤務。95年に新進党総務局企画室長、その後、太陽党、民政党、民主党で事務局長を務める。2001年に民主党を退職し、政治アナリストとして活動。葉山町出身・在住。65歳。

【神奈川新聞】

 
 

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