小田原市は22日までに、芸術文化創造センターの完成後に廃止する市民会館の跡地を、観光バス対応の駐車場として活用する方針を具体的に示した。市最大の観光地である小田原城址公園の玄関口に当たる小田原駅東口側に大型観光バスの駐車スペースが不足しており、地元の要望が高まっているためだ。
市街地整備課によると、同市本町の市民会館は老朽化が著しく、隣接地に計画中の同センターの開業(2016年度末予定)に伴って機能を移転して取り壊す予定。
同公園に面した通称「三の丸地区」の整備は、主に同センターと同館の跡地活用からなる。約3400平方メートルの同館跡地については歴史観光などの周遊拠点に位置付けられている。
市の「小田原駅・小田原城周辺まちづくり検討委員会」09年3月にまとめた報告書を受け、市は同館跡地に回遊促進施設、駐車場、広場などを整備するイメージを提示するにとどまっていた。
ここにきて、観光バスの駐車場が急浮上したのは、同駅東口お城通り地区再開発事業のうち、先行整備する駐車場施設計画に見直しを求める陳情が10月初めに出されたためだ。
提出者には周辺の商店会・商店街の代表者がほぼ名を連ね、市の説明不足を批判して観光バスの駐車スペースを盛り込むよう求めた。市議会の陳情審査の過程で、市側は「設計上、駐車場施設での観光バス対応は難しい」と説明する一方、国道1号沿いにある同館の跡地で手当てしたいとの意向を明らかにした。
背景には、新幹線ホームのある同駅西口の広場には、団体バスの乗降場があるが、東口は路線バスが主体との駐車場事情がある。唯一収容できる藤棚臨時専用駐車場(12台)は駅から遠く、観光客らの利便性に寄与しないとの不満が地元に根強くあった。
また、藤棚臨時専用駐車場については、開設場所の同公園が国指定史跡であるために「不適切施設」とされ、今後の整備を進める上で将来的な移転が求められている。
ある商業者は「2020年の東京五輪が決まり、外国人ら来訪者の増加を期待している。経済活性化の好機を迎えるのに、駅前に観光バスが入れないエリアは市外の業者に敬遠される」と危機感を募らせる。
同課は「市民会館跡地は大手登城ルートにも当たり重要な場所。ただ、活用の具体的な話が決まるのは芸術文化創造センターが完成してからとなり、もうしばらく時間がかかる」などと話している。
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