土地借用期限が迫っている県立川崎図書館について、県は11日、京浜臨海部の殿町地区(川崎市川崎区)に移転する方向で検討を始めたことを明らかにした。ライフイノベーション国際戦略総合特区に絡めて、県が「産業情報センター」としての機能を持つ拠点施設をつくることも表明。その新施設に入居する形態を想定している。
県は緊急財政対策の一環として川崎図書館の廃止方針を昨年11月に提示。今年2月に撤回したが「企業支援につながる機能を高度化・特化して川崎市内に残す」としただけで、移転場所は示していなかった。
県議会予算委員会で土井隆典氏(自民)の質問に、黒岩祐治知事は「殿町地区に県主導で戦略的総合的な施設をぜひ造りたい」と表明。さらに「ライフイノベーション特区の目指す方向性と川崎図書館の潜在力は、かなり軌を一にする。統合することは効果的。その方向で教育委員会と調整する」と述べた。
これに先立つ答弁で、県立図書館を所管する藤井良一教育長も「川崎図書館は知的所有権センターとして企業を支援してきた。こうした機能は(ライフイノベーション関連企業にも)大いに役立つと考えている」と述べ、生命科学関連企業を支援する視点で移転先を検討する方針を示唆した。
川崎市によると、国際特区には今後、東大などの研究室も入居する予定だ。川崎図書館について、関係者の間では研究活動を補完する「科学技術ライブラリー」などとして期待する声もある。
川崎図書館では企業や大学などでつくる「神奈川県資料室研究会」が半世紀にわたり活動する。副会長の末廣恒夫さんは「移転先の見通しが立ったことを歓迎したい。産業支援の方向にも賛成だが、個人が排除されないか心配。今後は議論をよりオープンにし、われわれユーザーの声を反映してほしい」と話した。
【神奈川新聞】