丹沢の自然再生に向けて、市民と行政が協働で取り組んできた10年間の活動が、「丹沢の自然再生」(日本林業調査会)と題した本にまとまった。丹沢の実態を示す調査結果や、対策の効果などを詳細に記し、「再生の兆しが見えてきた」と報告している。
本は、丹沢再生活動に取り組む官民協働の組織「丹沢大山自然再生委員会」(委員長・木平勇吉東京農工大名誉教授)を中心に、活動に参加したさまざまな人々が執筆を担当。木平さんが編集委員長を務めた。
木平さんによると、高度経済成長期を経た1980年代ごろから、大気汚染や林業の衰退などの影響で丹沢の荒廃は始まった。生態系の変化でブナは枯れ、シカは増殖し、渓流の水質も悪化した。
改善に向け、県などは2004年に官民協働で丹沢大山総合調査を実施。再生委員会を立ち上げ、対策に乗り出した。07年に県が導入した水源環境保全税を財源に、間伐や増えすぎたシカの管理捕獲などを実施。適度に日当たりの良くなった森には下草が生い茂り、雨が降っても土が流れないなど水源機能も回復してきたという。
「都市部に近い丹沢は、人間社会の変化に敏感に反応する。だからこそ多くの県民に丹沢の現状を知ってもらい、その自然を守る意義を考えてもらいたい」と木平さんは話している。
B5判カラー616ページ。6千円(送料無料)。申し込みは日本林業調査会電話03(6457)8381。
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