国内有数の観光地、箱根町で23日、今後4年間のかじ取り役を決める町長選が告示される。9月には箱根火山一帯が「日本ジオパーク」に認定されるなど明るい話題はあるが、東日本大震災の影響に日中関係の悪化などのマイナス要因が重なり、苦境が続く。観光関係者は「新たな戦略を描いて」などと選挙戦での論戦に期待をかける。
9月24日夕、県小田原合同庁舎に小田原市や湯河原町などを含む関係自治体の首長らが集まった。待っていたのは、ジオパークの認定報告。決定を知らせる電話が鳴ると、くす玉を割って祝い、テレビ電話回線で結ばれた県庁から“出演”した黒岩祐治知事は「世界ジオパークを目指したい」と意気込んだ。
貴重な自然を保護しながら、観光や教育に役立てている地域を認定するジオパーク。同町を中心とした1市3町などで推進協議会を設立し、認定に向けた準備や機運づくりに努めてきた。
とはいえ、認定後のアピール度は世界遺産などと比べてかなり低い。箱根はもともと知名度が高いだけに「認定によって集客効果が高まるとは思えない」(観光関連団体の関係者)との冷めた見方もある。
そうした声がある中でも認定を重視してきたのは、温泉ほどは観光PRに生かしてこなかった地質や生物といった特徴ある遺産を掘り起こし、リピーターを増やす狙いがあるからだ。ジオパークの拠点の一つである大涌谷では、箱根ロープウェイの駅舎建て替えのほか、大涌谷観光センター内に「火山学習センター」(仮称)を開設するといったリニューアル事業が進んでいる。
町が2004年に掲げた「年間入り込み観光客2千万人、宿泊客500万人」などの数値目標のうち、日帰りはおおむね安定した数字を維持しているが、宿泊客数はここ10年ほど400万人台で推移。首都圏に近い立地の良さが逆に滞在期間を短くしているとの指摘もある。
東日本大震災の影響などで大きく落ち込んだ昨年の入り込み観光客数は1700万人台。今年に入ってからは、東京スカイツリーをはじめとした“競合施設”のオープンや夏のロンドン五輪による外出控えに加え、日中や日韓関係の悪化が影を落とす。近年は中国や台湾、韓国などからの観光客が目立っていただけに、町内のある観光施設は「震災の影響から徐々に回復傾向にあった外国人客がまた落ちこんだ」と厳しさを強調する。
こうした状況下での町長選について、別の事業者は「まずは箱根に来てもらわなければ。行政や事業所などの枠組みを超えた取り組みをさらに」と注文を付ける。箱根温泉旅館協同組合の関係者は「挽回には日本人観光客を呼び込むしかない。長期的な観光戦略を明確にして」と訴えている。
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