高度先端分野の研究開発から事業化、実用化へ、研究開発都市・川崎で新産業創出拠点の集積、新たな産官学連携が始まっている。次世代の成長分野とされるナノマイクロ(超微細技術)、ライフサイエンス(生命科学)を中心に新施設が稼働し、産業化を見据えた研究機関、大学、企業間の共同研究などがスタート。川崎市はこうした動向に着眼し、支援の取り組みをさらに進める考えだ。
川崎市内では、今年4月、かわさき新産業創造センター(幸区新川崎)の新館として、ナノマイクロの実用化へ向けた「NANOBIC(ナノビック)」が供用を開始。付属する大型クリーンルーム棟も9月から稼働した。大学関連では、明治大学生田キャンパス(多摩区)の隣接地で、今春、ベンチャー企業支援、中小企業連携の拠点を図る地域産学連携センターがオープンするなど、新産業創出、産官学連携の新拠点が相次いで誕生した。
「今後、企業間、企業と大学などネットワークの形成が重要になる」。同市の阿部孝夫市長は7月、かながわサイエンスパーク(KSP)で開かれた先端技術見本市のオープニングで、市内へのインキュベート(起業支援)拠点の集積に触れ、市内、県内経済への波及に期待を込めた。
市内への集積は今後も続く見通しだ。大きな追い風になっているのは、羽田空港国際化と国際戦略総合特区の指定。特区では、昨年7月、実験動物中央研究所(実中研)が移転。県の出資でKSP内に設立された神奈川科学技術アカデミー(KAST)は来年度、特区内に年内に完成する産学公民連携センター(川崎区殿町3丁目)に、ライフサイエンスに関連した新たな研究拠点を開設する方針だ。同センター内には、バイオベンチャーなどを対象にしたレンタルラボも設けられ、研究開発型企業の進出が予定されている。
川崎市は従来、市内での研究機関、研究開発型企業の集積に着目し、企業と大学、大企業と中小企業のネットワーク化、知的財産交流、ビジネスマッチングなどに取り組んできた。今後、ナノビックと特区での研究開発の連携強化など、市内で行われている研究開発の一層の連携強化を図り、成長分野の産業化を進める考えだ。
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