他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 政治・行政
  4. 世界遺産ガイダンス施設整備:市長が候補地転換に、議会は反発/鎌倉

世界遺産ガイダンス施設整備:市長が候補地転換に、議会は反発/鎌倉

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2012年7月15日(日) 00:53

2013年夏の世界遺産登録を目指す鎌倉市に、世界遺産ガイダンス施設の有力な候補先が浮上した。国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査が今夏から秋に迫り、先行登録地の関係者は施設の早期オープンを勧める。市も万全の準備で登録を有利に進めたい考えだ。一方で当初計画の唐突な転換に市議会側は反発。松尾崇市長が強調する「スピード感」は「焦り」とも映る。

◆「調査前に」

「運がよすぎる」。07年に世界遺産登録された石見銀山(島根県)の実務を担う大田市の中田健一さんは、鎌倉のガイダンス施設候補をうらやむ。大田市はイコモス調査(06年10月)までに「石見銀山世界遺産センター」を着工できなかったからだ。

財政難で1998年、施設の整備計画は頓挫。6年後に構想を練り直し、オープンは08年にずれ込んだ。調査員に施設の模型とパネルを用意し、建設予定地を案内してしのいだが、遺産の保存管理と観光客の受け入れ態勢の不備を指摘された。中田さんは「質問に答えるのに四苦八苦だった。調査前に施設を建てるに越したことはない」と話す。

11年6月に登録された平泉(岩手県)は一度登録を見送られ、07年と10年に2回、調査員を迎えた。「平泉文化遺産センター」は09年、既存施設を改修してオープン。1度目の調査で施設の必要性を示唆されたが、完成後の2度目は展示内容について質問を受けなかった。世界的になじみの薄い浄土思想も「百聞は一見にしかず」(同センター)だった。

◆アピール

ガイダンス施設は登録条件でないが、鎌倉市は候補先に調査員を案内して熱意をアピールしたい考え。松尾市長は「スピード感をもって進める」と繰り返す。7月下旬から8月上旬にかけて住民説明会を開き、所有者との基本合意を経て、早くて市議会9月定例会に関連議案を提出する方針だ。

当初の候補だった小学校旧講堂は保存・改修工事が必要で、オープンは17年にずれ込む見通しだった。新候補は築年数が浅く、そのままガイダンス施設に転用が可能で、14年にもオープンできる。一体的に整備する方針の隣りの建物は埋蔵文化財を展示する機能を備え、“即戦力”となる。

◆「寝耳に水」

市は6月の市議会全員協議会に報告したが、市議から「寝耳に水」「説明不足」と非難が集中した。市長は「唐突感のある報告で申し訳ない」と釈明。あらためて説明を求められた。

立地にも課題が残る。JR鎌倉駅から徒歩10分弱の利便性を市は「理想的」とみる一方、奥まった住宅街で、急増が見込まれる観光客を許容できるか気掛かりだ。平泉のセンターは登録前3万5千人前後だった入館者が11年度は約9万人に膨れた。石見銀山も一気に増えた観光客から遺産を守るため、中心部の車両の進入を禁止した。

鎌倉市世界遺産登録推進担当部長の島田正樹さんは、大規模な駐車場整備や観光バスの乗り入れは「全く考えていない」と話す。平泉町世界遺産推進室の千葉信胤(のぶたね)さんは「遺産の保存管理と来訪者の利便性を両立させることが重要だ」と助言した。

【】

 
 

文化財に関するその他のニュース

政治・行政に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング