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参院選-あなたの選択は-
デモクラシー道場(下)改憲したいがための議論

選挙 | 神奈川新聞 | 2016年2月25日(木) 02:00

安全保障関連法案に反対し、プラカードを掲げる人たち=2015年7月14日、東京・日比谷野外音楽堂(共同)
安全保障関連法案に反対し、プラカードを掲げる人たち=2015年7月14日、東京・日比谷野外音楽堂(共同)

 今夏の参院選で争点に上がる憲法改正。1月下旬、JR関内駅(横浜市中区)近くの飲み屋街の一角では、憲法改正と緊急事態条項をテーマにしたトークイベント「YOKOHAMAデモクラシー道場」が開かれた。同条項に詳しい弁護士の小口幸人が講師として登壇し、集まった60人の参加者からはさまざまな質問が上がった。緊急事態条項の議論の先にあるものとは-。

 -自民党改憲草案で「内閣総理大臣により緊急事態の宣言が発せられたとき、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とあります。しかし、政令と法律は本来、異なるものなのでは。

 「その通りです。憲法と法律と政令と省令。それぞれご説明します。まず、憲法と法律以下は全く違います。憲法は、変えるために国民投票が必要です。それ以外は国会議員や内閣だけで変えられます。法律は、私たちが選んだ代表者である国会議員が国会で決めます。政令、省令は、法律より細かいことを決める際、内閣だけで決められものです。ただし、その内容は法律に反してはいけません。自民党改憲草案の条文では本来、国会で決めなければいけない法律が政令という呼び名で内閣だけで決められてしまう。恐ろしいことです」

 -衆議院の任期満了後に大災害が発生した際、選挙が実施できず、議員が不在となり、災害関連の法案が通せなくなるという主張が一部の国会議員から出ていますが。

 「まず、前提として、憲法54条に書かれている参議院の緊急集会について説明します。衆議院が解散されたときは、参議院は同時に閉会になります。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参院の緊急集会を求めることができます。つまり、衆議院が解散されたときに災害が起きても、参議院の緊急集会で対応ができます」

 「自民党憲法改正推進本部のみなさんは『衆議院の任期満了のときについては、憲法に規定がない。改正が必要だ』と言っているわけです。ただ、衆議院の任期満了は戦後1回しかありません。それ以外は全部解散しています。70年の間に1回しかなく、その直後に災害が起きる確率というのは相当低いでしょう。それにも関わらず『憲法改正が必要』というのは、重箱の隅をつつくような議論です」

 -災害が起きた後に選挙ができない場合、どうやって対応するのか。

 「災害が起きても選挙ができるようにすればいいのです。現行の選挙制度を変え、選挙ができる制度にすればいいのです。選挙は、主権者である国民の意見を聞く唯一の機会です。国家を揺るがすような災害が起きたときこそ、選挙はやるべきです。各議員、各政党に国家の在り方、再建の仕方を語っていただき、国民が『いい』と思ったものを多数決で決めていく。本来あるべき姿だとは思いませんか。ちなみに、第2次世界大戦中の1942年にも総選挙が行われています。大災害の後にも選挙はできます」


参加者からの質問に答える弁護士の小口(左)=1月21日、横浜市中区(コバヤシイッセイ提供)
参加者からの質問に答える弁護士の小口(左)=1月21日、横浜市中区(コバヤシイッセイ提供)

 

「本音は9条改正」


 
 -議員の任期延長を憲法改正で導入、という話もでてきていますが。

 「だれの判断で任期延長を決めるのか、だれも言及していません。意外と難しい話です。いくつかの案を検討してみましょう。国会議員の任期、国会に決めさせるのですか。国会議員は自分の任期、延ばしたいですよね。だめですね。内閣はどうでしょうか。三権分立は国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)がそれぞれ力を持つことで均衡を保っています。内閣に権限を委ねるようなことになれば、このバランスが崩れます。さらに、議院内閣制の日本では衆議院の与党党首が内閣総理大臣になることがほとんどです。結局、与党の党首に権限を委ねることになるので適切とは言えません。では裁判所でしょうか。裁判所は証拠に照らし合わせて判断をする場なのでこういった判断は苦手です。いずれにせよ、制度の組み立ては難しいでしょう」

 -マスコミの記事では「大規模災害などに備える緊急事態条項」と書かれている。政府・与党の言い方をそのまま流している。メディアへの注意喚起をぜひやっていただきたい。

 「おっしゃる通りで最もだまされてはいけないのがメディアなのですが、メディアもだまされていると思います。メディアの人にぜひちゃんと考えて書いて下さいと言いたい。報道の使命は、民主主義がおかしなことにならないように注意喚起して、情報を届けることです。金もうけでもないし、会社維持でも読者獲得でもないはず。本当に頑張ってもらいたいです」

-テロが起きたとき、緊急事態条項がなくて大丈夫なのでしょうか。

 「テロとして懸念されているのは、要するに政治的意図を持った無差別大量殺 人です。必要なのは、テロの防止と、起きた後の犯人検挙、再発防止。もっと議 論すべきは、捜査能力を上げるために通信傍受や捜索差押えをどうするかという 刑事訴訟法と、それに関する令状主義などの憲法の部分です。憲法の緊急事 態条項のところではありません。そして、テロというのは平時の統治機 構の下につくられた法律で毅然と対処することにこそ、意味があると思います。 そんなことでは揺らがないぞ、と。テロが起きたときに、平時の統治機構を停止し て人権侵害を発生させるというのは、テロリストの思うつぼです」

 -よく「外国が責めてきたらどうするんだ」と言われるが。

 「日本は個別的自衛権があるのですから、ミサイルが原発を直撃したらどうするのかぜひ議論し、想定してもらいたい。結局、事前の備えなのです。緊急事態条項は『起きてから』の話です。全然使えません。攻められて危ないというならば、きちんと国会で議論するべきです。国民をどのように守るのか。そのための法律をつくってほしいと思います」

 -現行憲法に不備があって改憲が必要というより、改憲したいがための議論に聞こえます。

 「おかしな議論に巻き込まれるのはやめましょう。この道はどこへ向かっているのか。2007年の安倍政権のとき、憲法改正のための手続きを定めた国民投票法をつくりました。12年、憲法改正草案を出しました。14年、まずは憲法9条2項の解釈を閣議決定で変えました。15年、その閣議に合う安全保障関連法をつくりました。そして、夏の参院選で3分の2以上の議席を取ろうとしています。みんなが認めそうな条項で憲法改正の発議をするためです。しかし、その先に何が待っているか。どうみても憲法9条の改正です。よりによって改憲の題材のために災害をだしにしている。国民の善意がかき立てられると思っているからです。こんなものを絶対に許してはいけないと思っています」

=敬称略


「憲法改正と緊急事態条項」をテーマにしたトークイベントに集まった参加者=1月21日、横浜市中区(コバヤシイッセイ提供)
「憲法改正と緊急事態条項」をテーマにしたトークイベントに集まった参加者=1月21日、横浜市中区(コバヤシイッセイ提供)

 ◆参院選-あなたの選択は-◆

 今夏の参院選で、安倍晋三首相は「憲法改正」を争点にすると明言した。改憲は、自民党の党是であり、首相自身の悲願と目される。昨年は憲法違反と指摘された「安全保障関連法」が強行採決の末に成立した。参院選で改憲の国会発議に必要な定数3分の2以上の議席を与党が確保した場合、戦後初の憲法改正が一気に現実味を帯びる。

 政権の動きに対し、いま街場では二つの動きが加速している。アベ政治の暴走に危機感を募らせ、打倒に向けて動き出す人々。一方、政権を支持し、憲法改正へと機運を高める人々。安全保障関連法、改憲、そして安倍政権の是非が問われる国政選挙。

 あなたは安倍政権を支持しますか。それとも支持しませんか―。半年間、両者の立場から、主に市井で活動する人々を追うとともに、決戦に向けた候補予定者らのうごめきも伝えていく。

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