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市民勝手連「ミナカナ」 (下) 手携え、市民が共闘

選挙 | 神奈川新聞 | 2016年1月30日(土) 02:00

今年1月に行われた全国市民勝手連のシンポジウム=1月22日、参議院議員会館
今年1月に行われた全国市民勝手連のシンポジウム=1月22日、参議院議員会館

 2015年12月3日。神奈川県民による市民勝手連「ミナカナ」の結成集会で最後にマイクを握ったのは、弁護士の武井由起子だった。

変化

 「私は、たぶん、新しいタイプの『アクティビスト』というか、自分は『ノンポリ弁護士』って言っていて、企業に勤めていた経験が長いものですから、憲法カフェをあちこちでやって、国会前の見守りなんかをやってきました。でも、これは『自分で何かをしなきゃ、もういけないだろう』ということで、『海外のいろいろな声を』と「OVERSEAs」(オーバーシーズ=安保法制に反対する海外在住者・関係者の会)を考えて立ち上げました」

 武井は伊藤忠商事で14年間勤務した後、10年に弁護士登録。全国各地で憲法カフェを行うほか、安全保障関連法に反対する国会前のデモでは、事故などが起きないよう見守る「見守り弁護団」を務めた。

 「選挙とか政治とかは本当に嫌いで『なんか、そういうのはちょっと』って言い続けてきたんですが、(安保関連法案を強行採決した政府与党の)数の力を見せつけられて『もう何とかしないといけないな』と気持ちを変えました。本当に今まで何もやったことがなかったようなママの方とかを見て『自分はもっと変わらないとだめじゃないか』と。今日、地元で頑張って活動されてきた弁護士の太田(伊早子)さんとも一緒になって、従来活動されてきた皆さんともつながれて、すごいことだなと思います」

 この日の午前中、選挙ジョッキー兼放送作家・座間宮ガレイによる選挙勉強会が行われていた。武井はすぐに本題へと入った。

 「参院選、神奈川選挙区に焦点を当てて話をすると、議席がそもそも『3』だったところが『4』になるわけですね。いまの現職は自民党の小泉昭男さん、無所属、元みんなの党の中西健治さん、そして民主の金子洋一さん、3人いらっしゃるわけですね。そこが『3』から『4』になる」

 この数字は何を意味するのか。

 「皆さん、安保反対で集まって来られました。いまの3人、安保法案のときの投票行動を知っていますか。自民党の小泉さんは当然『賛成』ですよね。無所属の中西さん、退席しています。投票していない。民主党の金子さんは『反対』しています。安保のとき『反対』に投じた人は、神奈川選出では1人しかいなかったんです。それが、4人中3人が与党議員となるような事態を私たちは許しちゃいけない。皆さんといろいろと議論しながら、どういう風にしたら『4分のいくつかを盛り返していけるか』というところを、これから皆さんの知見をお伺いしながら、やっていけたらと思っているところです」

吐露


 初回にして115人が集まった選挙勉強会。参加者もまた、さまざまな思いを抱えていた。

 民主党を応援しているという女性は不安な気持ちを口にした。

 「民主党が政権を取った後に、いろいろあって『民主党を応援しづらい』『応援したくない』と内心思っている人が多いと思うんですが、民主党が今度の選挙で頑張って、民主党と他の野党と政権を取ったとしても『その後の政治をきちんとやってくれるだろうか』『政治がちゃんと回っていくのだろうか』という不安もあると思うんです。政治が回っていくために、有権者もまとまるというところで、どういうことを意識していったらいいのでしょうか」

 ある高齢の男性は、憤った様子でマイクを手にした。

 「当たり前のように、神奈川においてはせいぜい4人の候補者のうち、(当選可能な野党候補者は)2人が最大限だと語られているんですが、自民、公明というのが指定席になっているようなことに対して『いや、野党候補者を3にするんだ』という声はないのかということをお伺いしたい。先ほどの安保法制だけではなく、神奈川においては、リベラルな旗こそふさわしいんだ、という思いがあります」

 別の男性も率直な思いを口にした。

 「正直いって、民主党の金子さんには違和感があります。日本会議に入っている候補者を無条件で応援するという人は決して多くはないと思う。金子さんが日本会議であるという趣旨を踏まえて、どういう風に判断するのか、ということは私にとっては非常に大きな、ポイントになっている」
(※金子議員は今年1月19日、自らのツイッターで日本会議については「退会させていただきました」と投稿している)


「ミナカナの目的はどこにあるのか」と問い掛ける座間宮
「ミナカナの目的はどこにあるのか」と問い掛ける座間宮

 参加者からのさまざまな声に、再び講師の座間宮がマイクを握る。

 「われわれ市民がすごい力を持って、民主党が勝てなかった選挙区だけど勝たせるということができた場合、民主党が失政すれば、すぐに票を引けばいいわけです。『私たちのこの政策、この約束を公約に掲げてくれ』と協議をした上で『差し込んでいってくれ』と。『そしたら、われわれは全力で応援しますよ』と。ひとまず政策について協議をする、と。党本部とするのではなく県連と協議する、地元に近いところで協議する。これくらい多くの人がまとまって動けばできますから、堂々とそういう話をすればいいんじゃないでしょうか」

 「自民、公明が指定席なんでしょうか、という議論はあまり役に立たない。基礎票を上回る票で、われわれが自民、公明党より上で(野党候補の)議員を送り込めるのか、という大戦略が必要になるわけです。自民がずっと100万クラスの票を持っていることは、過去のデータからも明らかなわけですよね。これを信じるか信じないかは皆さん次第です」

 「民主党政権が誕生したときに、自民から民主に乗り換えてこられた方もたくさんいるんですが、そうではなくて、投票率が上がってノリで民主党に入れた人が多かったわけですよね。つまり自民票を奪って、こっちに持ってくるというのは大変でしょ。共産党支持から自民党支持に転向する人いないでしょ。同じように、自民党支持している人が転向して、共産に入れましょう、とかまず難しいと思って下さい。そこに骨を折るよりも、ほかのことに骨を折った方がいいですよね」

目的


 ミナカナの目的はどこにあるのかを考える。

 座間宮 「みなさん、一番やりたいことは何ですか」

 参加者の男性 「政権交代!」

 武井 「憲法改正阻止」

 座間宮 「いまの危機的状況を脱したいわけですよね?みなさん、金子さんと結婚したいとかそういうこと考えているんですか?みなさん、言っていることが、人のことを好きとか嫌いとか、恋愛みたいなことを言っているんですよね。ちゃうでしょ。(違うでしょ)。議席配分を変えて、状況を変えるんでしょ」

 参加者の女性 「もし、(民主党の現職)金子さんを応援して、彼が今回の選挙に通って、手のひらを返して、政権側に行ってしまうんじゃないかという不安があるんですよね」

 座間宮 「そんなことが起きても気にしないことです。そんなことを心配して、選挙ができないのか。それとも『金子さんは使い物にならないから絶対に応援しないんだ!』と、腹を決めてわれわれで候補者1人決めて出すのか。どっちがいいですか? 両方とも共倒れになるシナリオもあります。そこは覚悟を持って望みましょうね。ぐずぐず言っている場合ではないですよ。ということを、きちんと議論しないといけないでしょ。民主の金子さんは一応、2連勝していますよね。金子さんへの心情を変えることはできないです。『好きになってくれ』という話はできないので。そういう話をしたいんじゃないんです。苦しみはよく分かります。そこはいつまでも付きまとうんです」


ミナカナ結成集会で、今後の活動について語る世話人のメンバー=2015年12月3日、横浜市中区
ミナカナ結成集会で、今後の活動について語る世話人のメンバー=2015年12月3日、横浜市中区

 現実を捉えた率直な物言いに、参加者もハッとした表情を浮かべる。座間宮はあらためて問い掛けた。

 「われわれは何を求めているんだろうか、と言ったときに『どの政党の人に入ってほしい』というわがまままでこだわるのか、『安保法制を廃止にしてくれる人だったら、誰でもいいんだ』というところにするのか。心を決めないといけない。わがまま、なかなか言えないわけです。『リベラルの旗を立てられないのか』という方もいましたが、やりたいことと、最低限、成し遂げたいことのギャップは腹をくくって覚悟しなければいけない。いろいろな考え方はあると思うので、どうこうしろとはいいませんが、何とかしないといけない選挙ではある。『議席配分を変える』という目標に向かわないと、イデオロギー、理想の問題なってしまう。選挙ということで腹をくくらなければいけないんでしょう」

ブランド


 会場に駆け付けた元首長の男性は言った。

 「ミナカナが応援すると『新しい人たちがいっぱい入ってくるよ』と付加価値ブランドとして活用していけば、神奈川だけではなく、他の地域に反映していくと思います」

 午前10時から始まった選挙学習会は、すでに5時間を超えようとしていた。しかし、ほおを紅潮させた参加者からは「まだ話し足りない」といった表情すら見受けられた。

 終了時刻が迫る中、ステージに再び座間宮が立つ。

 「県民大会、やりません? 横浜スタジアムで」

 「おおーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 座間宮の突如の提案に、会場から大歓声がわく。
 「『これだけ大きなことをやるぞ!』と言ったときに、こまごま言っている市民運動が一つにまとまるんですわ。沖縄は『島ぐるみ会議』というのをやって、県民大会やって、みんな一つになっている。それをまねするわけ。われわれもでかいところでやって、でかいところに集まって『選挙やろう!』と盛り上がっていくわけでしょ。やりません? 『ミナカナ』というところに力が集まって、県民大会ができたらいいですね」

 この日、一番大きな拍手が会場を包んでいた。
=敬称略



 今夏の参院選で、安倍晋三首相は「憲法改正」を争点にすると明言した。改憲は、自民党の党是であり、首相自身の悲願と目される。昨年は憲法違反と指摘された「安全保障関連法」が強行採決の末に成立した。参院選で改憲の国会発議に必要な定数3分の2以上の議席を与党が確保した場合、戦後初の憲法改正が一気に現実味を帯びる。

 政権の動きに対し、いま街場では二つの動きが加速している。アベ政治の暴走に危機感を募らせ、打倒に向けて動き出す人々。一方、政権を支持し、憲法改正へと機運を高める人々。安全保障関連法、改憲、そして安倍政権の是非が問われる国政選挙。

 あなたは安倍政権を支持しますか。それとも支持しませんか―。半年間、両者の立場から、主に市井で活動する人々を追うとともに、決戦に向けた候補予定者らのうごめきも伝えていく。




「安倍政権を倒す」と意気込むミナカナのメンバー
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