県内初となる家庭系ごみの無料戸別収集を葉山町がスタートさせたのは昨年6月。山梨崇仁町長は出馬会見で「住民の皆さんの協力で(燃やすごみ量は)20%前後の削減率を維持している」と胸を張った。
町は15年度末までに燃やすごみ量を10年度(7327トン)に比べ30%削減する目標を掲げる。戸別収集開始の3カ月前から担当者が各地区を回り、説明会を開催。分別品目の細分化などについて町民への周知徹底を図った。
環境課によると、資源化率は30・0%(10年度)から42・2%(14年度)へ向上。昨年度の燃やすごみも5909トンで10年度に比べ約20%減った。同課は「町内会や自治会単位での集団資源回収も貢献している」とし、戸別収集実施と同時に行った分別や収集方法の見直しにより、4千万円を削減できたと説明する。
町が「ゼロ・ウェイストへの挑戦」を打ち出してから7年。資源化や減量化を進めて焼却や埋め立てをしない「ごみゼロ」へ向け、着々と前進している。一方、ここ数年、ごみ処理に影を落としているのが“宙に浮いた”ままの焼却炉の問題だ。
排水から基準値超のダイオキシンが検出され、10年11月に休止。町は「近隣自治体等とのパートナーシップ構築の過程で廃炉」としているが、敷地が手狭でダイオキシン対応の工事ができず、善後策は決まらないまま。逗子市との処理広域化も模索するものの具体的な進展はなく、埋め立てとともに焼却は町外へ民間委託し、処理費用もかさんでいる。
焼却炉解体にも多額の費用を要し、同課は「焼却温度を高く保つためには一定のごみ量が必要で、自前で燃やすのが効率的とは考えづらい。とはいえ、簡単に壊すこともできない」と複雑な胸の内を明かす。
住民にエコの意識が深く根付き、豊かな自然を誇る葉山町。地元で開発された生ごみ処理器「キエーロ」の導入台数は10月末時点で1400台を超え、全世帯の1割強に浸透している。 資源循環型社会形成に向けた“トップランナー”を目指し、いかに環境への負荷を減らして安定した処理を継続していくか。リーダーには、知恵と決断が求められる。