「リベラルの代表として市民と野党の共闘で憲法無視の安倍政権を打倒する」
選挙戦折り返しとなる15日。共産党・畑野は雨の降る川崎駅近くの銀柳街商店街(川崎市川崎区)で声を上げた。返す刀で「憲法9条を変え、安保法制に賛成する希望の党は安倍政権と同じ。政権は倒せない」と新党批判も忘れなかった。
神奈川10区は、8選を目指す自民党の田中を、民進党から希望入りした新人の市川と共産の畑野の女性2人が追う展開。希望と共産の間でも政権批判票の集約を競い、火花が散る。
希望の結党前までは、民進と共産の野党共闘を目指す市民連合が発足し、候補者一本化を探る動きもあった。強固な地盤を持つ田中に対抗するためだ。市川が希望入りしたことで一本化は消えたが、共産党県委員長の田母神悟は「希望は自民の補完勢力だ。前は野党が割れていたが、改憲勢力の“与党”が割れた形であり、戦いやすくなった」とみる。
これに対し、希望・市川は「自民の補完勢力ではない。右にも左にも寄りすぎず、立ち位置は反自民、非共産だ」と反論。街頭でも「傲慢(ごうまん)な政治を続ける安倍政権にストップをかける」と批判を強める。
自民参院議員だった斎藤文夫の秘書を経験し、田中とはいわば同門。民進時代は共産との共闘に反対し、細野豪志ら保守系グループと党を離れた。これにより川崎地域連合の支援を失ったが、民進の市議、県議らが支援に入る。
序盤情勢で「伸び悩み」が報じられた希望。それでも、12日に代表の小池百合子が応援入りした川崎駅西口は聴衆で埋まった。その日、市川は日が暮れた東急東横線新丸子駅前でも「皆さん、自民圧勝で本当に良いですか。森友・加計問題のような政治を続けるのですか」とボルテージを上げた。
一方、両陣営から批判を受ける自民の田中は「小池新党が終盤にどんな風を起こすか分からない。国民の安倍政権への批判は謙虚に受け止めつつ、しっかり支持を固めることが大事だと思う」と気を引き締める。
市議、県議を経験し、細やかな日常活動で分厚い地盤を形成。前回、前々回と次点だった民主の元財務相・城島光力に4~5万票の大差をつけている。
15日夜、幸区の幸市民館での個人演説会。公明党の参院議員・佐々木さやからが駆け付ける中、長男の県議・田中徳一郎が希望と共産のシンボルカラーを引き合いに、新党効果や野党共闘で追い上げる他候補に対抗心を燃やした。
「小池百合子さんは『緑のたぬき』と呼ばれているそうだ。10区は『緑のたぬき』と『赤いきつね』と戦っている。だが、インスタントな政党に政権を任せるわけにはいかないんです」