立民・浮動票も射程
公明・強固な組織票
「自公政権に対抗できる最善の策だ」。新たな所属先を明らかにしたのは公示のわずか2日前だった。8日夜、民進党を離党した青柳は立憲民主党からの出馬を発表。衆院の解散直後に旗揚げした立民の最後の公認候補となった。
過去2度、上田に敗れて比例復活した青柳が描いたのは「公明党候補との事実上の一騎打ち」。前回は水面下で模索されてきた民主と維新の党間の調整が解散直前に決裂。上田に2万6千票余りの差をつけられた。
だが、今回は違う。事実上の野党候補一本化で、対保守の票を結集させる土壌が整ったのだ。東京都知事の小池百合子が代表を務める希望の党は、都政で協力する公明に配慮し候補擁立を見送った。共産党も青柳が希望か立民か無所属かと態度を明かさない段階から「希望の党から出ることはあり得ない」(県委員会幹部)と判断、早々に候補予定者を取り下げた。
「中道の民意の受け皿になり三度目の正直で勝ちたい」。青柳は従来の保守、無党派層に加え、支援団体や組織、リベラル層からの支持も目指す。国会活動の傍ら精力的に地元を回って支持拡大に努めてきた自負もある。「反応は良い。追い風だ」。連日街頭各所で演説し、ビラを配る青柳の足取りも軽やかだ。
16日には、党代表の枝野幸男が「自公の議席を減らすには選挙区で勝つ必要がある。主役は皆さんだ」と声を張り上げ、聴衆を盛り上げた。それでも陣営は「相手には強大な組織と長年の経験がある。僅差の勝負だ」と気を引き締める。
一方、受けて立つ上田陣営は、「厳しい戦い。接戦だ」と危機感を強める。従来同様に比例重複立候補をせず小選挙区単独の「背水の陣」で臨んでおり、「負けたら終わり」と引き締めに躍起だ。
自民党の閣僚級が連日のように応援に入り、「自公統一候補」をアピールする。14日には官房長官・菅義偉が「上田さんは連立政権の象徴。当選へ自民党も総力を挙げる」と強調。ラストサンデーの翌15日には、全国を飛び回る自民党筆頭副幹事長・小泉進次郎が初めて6区でマイクを握り、雨の中集まった大勢の聴衆に新党批判を展開した。
党の政策責任者の上田はかつて536票差という激戦を制した経験もある。しかし、「独走」状態には達していないのが実情で、前回も青柳と民主、共産の野党票を足せば下回る。強固な支援組織があるとはいえ、自前の組織票だけでは当選圏内に届かず、自民票の上積みは欠かせない。自民の地方議員らが選挙カーを走らせ、隣接する選挙区にも公明幹部が入り、自民候補と並んで支持を訴える徹底ぶりだ。
「自民党とは約20年にわたって築いた信頼関係がある。何度も政党を渡り歩いてきた相手に負けられない」。終盤に向け、批判のボルテージを上げる。
6区ではこのほか、日本維新の会・串田が国会議員定数・報酬の3割削減などの「身を切る改革」を訴え、保守層や無党派層への浸透を図っている。 =敬称略