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名古屋大大学院教授・中嶋哲彦さん 2017衆院選
時代の正体〈540〉教育勅語復活許さぬ 安倍政治を問う

選挙 | 神奈川新聞 | 2017年10月16日(月) 11:19

教育勅語を巡る国会答弁の問題点について語る中嶋哲彦さん
教育勅語を巡る国会答弁の問題点について語る中嶋哲彦さん

【時代の正体取材班=成田 洋樹】 戦前の軍国主義の支柱になった教育勅語の復活は、どのように正当化されようとしたのか。教育勅語を重視する教育を行っていた森友学園の問題を巡り、安倍晋三政権からはその復活につながりかねない答弁が国会で相次いだ。名古屋大大学院教授の中嶋哲彦さん(62)による答弁の分析から浮かび上がるのは、戦前回帰を志向する政権への文部科学省官僚の忖度(そんたく)であり、憲法を軽視する政権の地金だ。

破綻した国会答弁


 教育勅語を園児に暗唱させていた同園について、安倍首相は当初称賛していた。中嶋さんは「政府答弁の論理は、首相を擁護するためにひねり出された可能性が高い」と指摘、官僚の忖度だけでなく、その背後に学校で教育勅語を肯定的に教えることへの道筋をつくりたいという「政権の意図」を見いだす。

 政府答弁の論理とは何か。依拠する戦後直後の動きを振り返る必要がある。

 文部省は1946年、教育勅語を「唯一の教育理念」とする考え方を捨て去り、古今東西の倫理や哲学も採用するよう求める通牒(通知)を出した。翌47年に憲法と教育基本法が施行され、教育勅語は憲法・教育基本法に相いれないとして効力を失った。衆参両院は48年に教育勅語の排除と失効確認を徹底するための決議を行っているが、46年通牒の影響で唯一の教育理念としなければ教育勅語に基づく教育は行えるという誤解が現場に広がり、それを払拭(ふっしょく)するためだった。

 だが、国会では憲法・教育基本法と国会決議によって明確に否定された教育勅語を肯定的に語る答弁が繰り返され、安倍政権下の約5年間で繰り広げられた憲法軽視、国会軽視がここでもあらわになった。

 「安倍政権は憲法・教育基本法と国会決議を意図的に無視し、46年通牒に依拠して『唯一の教育理念としなければ問題はない』という見解を柱にして政府見解を組み立てた」

 そう分析する中嶋さんは、既に否定されている46年通牒を持ち出す時点で政府答弁は論理破綻を引き起こしていると断じる。

歴史認識ゆがめる


 国会答弁や閣議決定の論理構成はこうだ。

 〈教育勅語を教育の唯一の理念とすることはできないが、普遍的な価値が含まれているから、憲法や教育基本法に反しない限り、教育勅語を肯定的に教えるための教材として学校で使うことはできる〉

 46年通牒に加えて依拠しているのはこの「普遍的な価値」だ。教育勅語には「親孝行をし、夫婦や兄弟は仲良くしなさい」というくだりがあり、稲田朋美防衛相(当時)や文科省の官僚が再三肯定的に引用した。


中嶋哲彦さん
中嶋哲彦さん

 戦前の家父長制下の家族は父親を頂点とした上下関係に貫かれていた。男尊女卑という時代の文脈抜きに家族関係を子どもたちに教える危うさへの無自覚、あるいは意図的な無視に中嶋さんは批判を強める。「時代状況を無視して教えることは、子どもたちの歴史認識を誤らせることになる。さらに、家族関係を巡る価値は別の教材で教えることが可能で、教育勅語をあえて持ち出さなければならない理由はまったくない」

 
 

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