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安倍政治を問う
時代の正体〈533〉リベラルこそ希望開く 国際政治学者・佐々木寛さん

選挙 | 神奈川新聞 | 2017年10月8日(日) 08:23

 ささき・ひろし 専門は国際政治学、平和研究。日本平和学会前会長。著書に近刊の「市民政治の育てかた 新潟が吹かせたデモクラシーの風」(大月書店)、編著に「東アジア〈共生〉の条件」(世織書房)など。
 ささき・ひろし 専門は国際政治学、平和研究。日本平和学会前会長。著書に近刊の「市民政治の育てかた 新潟が吹かせたデモクラシーの風」(大月書店)、編著に「東アジア〈共生〉の条件」(世織書房)など。

 多様性を尊重するリベラルか、独裁的なファシズムか-。10日公示の衆院選では安倍晋三首相の自民党と小池百合子都知事の希望の党の対決という構図が注目される中、国際政治学者の佐々木寛さん(51)は「真の対立軸」をそこに見る。安倍首相も小池氏も改憲志向であり、選挙結果によっては与野党の改憲勢力が大半を占めてファシズムに近い状況が生まれかねないと危惧する。

倒錯した新党騒動


 この数週間、国政はめまぐるしく動いた。安倍政権打倒を旗印に、希望の党への合流を決めた民進党の動きは有権者に驚きを持って受け止められた。だが、民進側の思惑は崩れる。小池氏側が安全保障と憲法観で民進出身者を選別し、排除したからだ。

 希望の公認候補には、集団的自衛権の行使を認める安全保障法制の容認と改憲支持という条件が突き付けられた。安保法制の廃止を求めてきた民進出身者にとっては「踏み絵」だった。

 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める新潟市民連合」の共同代表でもある佐々木さんは、民進には政局をしたたかに乗り切るリアリズム(現実主義)も、あすの社会を切り開く理想主義も欠けていたと断じる。「安倍政権打倒を唱えていたにもかかわらず、民進出身者が立ち上げた立憲民主党に刺客を出すという倒錯した状況を招いた。数の論理が自己目的化している。相変わらず選挙は風頼みの政党で、地方の現実から見れば全く説得力がない」

 希望の党は、与党に対抗する野党なのか。衆院選では与党の自民・公明、野党の維新・希望、立憲民主・共産・社民の3極の構図とされるが、野党の維新・希望も改憲論議に前向きな姿勢を示している。維新と同様に希望は自民の補完勢力にすぎないと、佐々木さんは切り捨てる。

 「希望の党の安全保障や憲法観は自民と何ら変わらない。むしろ自民よりも極端な候補者もいて、小池氏自身も核武装論者として知られている」

リアリズムの欠如


 リアリズムを欠いているのは安倍政権も同じで、安全保障政策が顕著という。

 安倍首相は9月の国連演説で、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して「対話は無に帰した。必要なのは対話ではなく圧力だ」と強調した。

 「長年、日本よりも間近で緊張状態を強いられている韓国は冷静で、『対話は不要』なんて雑なことは言わない。自民は現実主義的な安全保障政策を取っているとされているが、状況打開への対話の糸口は全く示せていない」

 一方、核拡散防止条約(NPT)未加盟国のインドに対しては、安倍首相は原子力協定を結んで原発輸出のトップセールスを行った。「隣国パキスタンも核を保有しており、両国は国境紛争を抱えている。協定では核兵器転用への歯止めはない。日本の原発産業の利益しか頭になく、この地域の平和のことを考えていないのではないか。将来、人類を核戦争に最も近づけた政権として記憶されるかもしれない」

 安倍政権は2015年、憲法解釈を変えて集団的自衛権を容認する安保法制を成立させた。権力は憲法によって縛られるという立憲主義をないがしろにした。

 「戦争で犠牲になるのは誰か。自衛隊員や他国の兵士、市井の人々だ。殺し殺されるということへのリアルな認識が欠けている」

地方発の民主主義


 グローバルに広がる資本主義の荒波を受けて、困窮世帯は増え続ける一方だ。

 「個人は生産の歯車としての労働者や消費者の役割を担わされ、分断されている。市民の要求を制度化につなげるという政治の機能も著しく低下している。政治にマーケティングの論理が浸透し、有権者は単なる動員や操作の対象としてしか見られていない。だから、あんな新党騒動が起きる」

 政治からリアリズムが失われ、さらには理想主義も喪失しかねない局面に日本は立たされている。

 国内外に多大な犠牲をもたらした敗戦を経て生まれた憲法の平和主義を守るのか。東京電力福島第1原発事故を忘れずに、脱原発にかじを切るエネルギー政策を進めるのか。

 時代の転換点で必要とされるのは真にリベラルの思想だ、と佐々木さんは断言する。「リベラルとは他者の意見と向き合い、多様性を尊重することだ。声を上げることができない人や意見が違う人をも政治の主人公として認め、ともに希望を語り合う。新しい民主主義はそこから始まる」

 さらに、安倍政権や小池新党から「保守」の看板を取り外さなくてはならないと強調する。

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