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#若者と政治
遠くて近い(下)足元の地域出発点に

選挙 | 神奈川新聞 | 2019年7月19日(金) 05:00

地域経済の衰退に直面しながらも、今月行われた海南神社例大祭では、みこしが勇壮に下町地区を渡御した=三浦市三崎
地域経済の衰退に直面しながらも、今月行われた海南神社例大祭では、みこしが勇壮に下町地区を渡御した=三浦市三崎

 きっかけは大学の英語の授業だった。講師の言葉が心に引っ掛かった。「君たち、基地問題を知ってる?」。米軍新基地建設が進む沖縄県名護市辺野古。大学院2年の小波津義嵩さん(23)=東京都文京区=が初めて訪れたのは5年前、大学1年の時だった。

 米軍基地が密集する沖縄本島中部の出身。小学生時代の記憶は、米軍機が校舎上空でまき散らす爆音とともにある。とはいえ、基地を殊更に意識することはなく、辺野古から10キロ余りの大学に進んでもなお距離は縮まらなかった。

 恩師に連れられた新基地建設強行の現場。お年寄りたちがトラックの前に立ちはだかり、体を張って資機材の搬入を阻止していた。

 なぜ、いままた沖縄なのか。沖縄戦を体験した先人たちの言葉に触れるたび、いまに連なる基地問題への関心が膨らみ、そして気付いた。「問題はずっと隣にあった。自分が見ようとしてこなかっただけだった」。辺野古や、米軍ヘリコプター離着陸帯建設が進んでいた東村高江に足を運び続けると、やがてわが事となり、当事者になっていた。

 都内の大学院に進んでも基地問題は身近にある。ふらりと帰省した昨年の夏休み、故郷は県知事選一色に染まっていた。友人が関わっていた縁もあり、建設に反対する玉城デニー氏の応援メンバーに加わった。ネットでの情報配信、イベント企画、ビラ作り…。50人ほどの若者ができることをできる範囲で携わり、自身も居場所を見つけながらのめり込んだ。

 「政治は遠い世界の賢い人たちがするものだと思い込んでいた。でも違った」。新基地建設がすぐに止まるとは楽観しない。でも玉城氏圧勝の瞬間に立ち会い、確信した。「政治は市井の人々のもの。選挙は自分たちの生活で変えたいことを最も手っ取り早く変えられる手段だ」

 陣営に加わるだけが政治参加ではない。投票も大切な一つの形。社会を動かせると信じて、参院選は新基地建設反対を掲げる候補に投じるつもりだ。

他人任せできない 

 「三浦を活性化するためには何があったらいいのか」。三浦市内で生まれ育った菊地未来さん(30)=同市=は修士論文のテーマに地元を据えた。大学、大学院ともに建築を学び、修了後は就職でなく、地元の課題解決に取り組む道を選んだ。論文の“実証実験”をやってみようとの発想からだった。

 経済の衰退、人口減、空き家の増加…。マグロコロッケの製造販売業で働きながら地域の内情を探った。若者を呼び込もうと、論文で取り上げたゲストハウスの運営に一時携わり、いまでは地元有志と起業し、市内への移住支援に力を注ぐ。

 故郷が元気を失っていく様子を肌で感じてきた。子どもの頃、祭りとなれば商店街の端から端まで出店が連なり、心が躍った。いまは隙間ばかりが目立つ。空き家問題も進み、「いいなと思っていた昔ながらの蔵造りの建物が取り壊されたのを見て、このままじゃやばいなって」

 国が声高な地方創生の成果は一向に届かない。「政治はいつも後手。待っていれば三浦はこのまま衰退してしまう。自分たちで先手を打たないと」。危機感は地元愛の裏返しだ。

 政治と聞いて浮かぶのは政局。政治家は公約の実現にこそ注力すべきだが、「政党(の論理)に引っ張られてばかりで市民に向いていない。もっと『個』を突き通して」と手厳しい。

 選挙へのまなざしはしかし、軽やかだ。「せっかくの権利。使わないのはもったいない」と、投票はほぼ欠かさない。候補者の比較サイトをのぞきもするが、「決め手はポスターデザイン、周囲の評判、そして直感」。自分たちの活動の後押しになる政治をしてくれそうな候補者に1票を投じる。あくまで主役は自分たち一人一人だ。

 投票のとき、思い浮かべるのは、足元の地域のこと、そこで生きる人々のこと。「他人任せにしていられない。私たちの暮らしに関わる問題なのだから」

 
 

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