国政の影響を受けた地方選挙が相次ぐ中、30日に投開票された横浜市長選は現職が新人2人に圧勝した。なぜ「風」は吹かなかったのか。選挙戦を振り返る。

7月30日午後8時半すぎ、現職・林文子(71)の3選確実の報に沸く横浜市中区の事務所に官房長官・菅義偉が駆けつけた。林や県知事・黒岩祐治と握手を交わし、「自民、公明が推薦した林さんが圧倒的な差で勝てた。大変うれしく思う」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
安倍政権の支持率急落や都議選の自民党惨敗、仙台市長選での与党候補敗北など不安要素はあった。が、自公に連合神奈川、地元経済界という重厚な組織に支えられた林は選挙戦で、「行政や議会、経済界が互いに目標を一つに知恵を出し合う。こういう体制が出来上がったからこそ政策が花開いてきた」と“相乗り批判”をかわし、「オール横浜」の強みを訴え続けた。
結果、林の得票数は5割を超え、新人2人の合計得票数をも上回った。陣営の一人は「2期8年の実績が評価された。安定した市政を市民が望んだ結果だろう」と総括した。
その一方、市長選と同日選となった緑区の市議補選では自民党公認候補が無所属候補に大差で敗北。補選に関わる同党議員らから「票が逃げる」との声が聞かれた。自民党市連幹事長・横山正人は「国政からの逆風を直接浴びた」と敗因を述べざるを得なかった。
「カジノ」なお火種
神奈川新聞社が実施した出口調査で示された「反カジノ」「中学校給食実施」がいずれも6割超という民意に、どう市政運営で応えるのか-。
林は当選から一夜明けた31日、「(カジノは)慎重に判断したい」と従来の主張を繰り返した。一方、前市議を擁立した民進党代表代行の江田憲司は同日、「民意を無視しカジノを強行すれば市長のリコール運動を検討したい」と強気のコメントを出した。
ラグビーワールドカップ(W杯)や東京五輪・パラリンピック、新市庁舎移転など大事業が待ち受ける一方、市の総人口は2019年をピークに減少に転じる。近年は働く30~40代が転出超過となり、ファミリー層が市外に流出しているとみられている。
「横浜には東京にない魅力がある。国、県、市、経済界、そして市民の皆さんとで飛躍させたい」。選挙中に林が訴えていた言葉だ。陣営の一人は言った。「おそらく3期目は集大成になるだろう。女性経営者の経験を生かし、将来を見据えた思い切った改革ができるのか、それとも思い出づくりの4年で終わるのか、真価が問われる」
=敬称略