市内唯一の百貨店、伊勢丹相模原店(相模原市南区)が2019年9月末で閉店する-。地元に大きな衝撃を与えた三越伊勢丹ホールディングス(HD)の昨年9月の発表から5カ月後、周辺の住民や商店主ら25人でつくる「大野南地区まちづくり会議」の面々は膝をつき合わせていた。
議題は同HDに宛てる要望書の文面。一人が「伊勢丹は単なる商業施設ではない。そのことを要望書に書いてほしい」と言えば、別の一人が「地元が閉店決定にショックを受けていることも伝えたい」と訴えた。
会合で次々と上がる切実な声。それらが示すように同店は駅前にある百貨店の一店舗ではなかった。
橋本、相模原両駅周辺とともに、市内三つの中心市街地の一つである相模大野駅周辺。そのまちづくりは、元号が「平成」になった翌年の1990年にオープンした同店を中心に進められてきた経緯がある。
■ ■
その一例が店外のペデストリアンデッキとつながる店内のコンコースだ。店舗北側の相模女子大学グリーンホール(市文化会館)や市立図書館などの施設に向かう市民にとって、コンコースはなくてはならない通路となっている。
同HDは閉店後、所有する土地と建物(地下3階地上7階、延べ床面積約2万9千平方メートル)に関して売却する方針だ。そのため、まちづくり会議のメンバーは通路が使えなくなり、駅周辺の回遊性が失われることに危機感を抱く。
要望書では(1)店内のコンコースを経由する歩行者動線の確保(2)公共施設につながるデッキの継続利用(3)後継施設は街のイメージを損なわない商業施設-の3点を強調した。
地域の声を同HDに届けるのはこれまで市の担当課が担い、住民らが直接伝えるのは異例だ。それだけ思いは強い。自治会長でまちづくり会議会長の大木恵さんは「『後は知りません』と出ていっては困る。市民にとって大切な場所。新たな顔になる商業施設を後継にしてほしい」と話す。