30日投開票の横浜市長選で、共産党は7日、前市議の伊藤大貴氏(39)を自主的支援すると発表した。同党などで構成する市民団体「市民の市長をつくる会」も伊藤氏を支持する。共産党などが次期衆院選を見据えた野党共闘と位置付ける一方、二元代表制の地方政治にはなじまないといった意見もあり、今回は緩やかな連携にとどまったが、市民参加を呼び掛けて共闘の機運醸成を目指す考えだ。
自主的支援
共産党県委員会の藤原正明書記長は、前回参院選からの安倍政権に対する野党共闘の流れと位置付け、「横浜市長選でも従来の枠組みを超え、大きな課題であるカジノ反対と中学校給食実現で一致できる協力の広がりをつくる」と説明。「全国最大の政令市の市長選は国政にも影響を与える。市政課題が最優先ではあるが、都議選でも安倍政権に対する怒りが広がっており、国政を変える流れを加速させる結果をつくりたい」と意気込む。
「自主的支援」という形に収まった背景には、伊藤氏が民進党の推薦ではなく自主投票となっている立場の上、「地方政治は住民が市長と議員を別々に選ぶ二元代表制のため、市長選に野党共闘はなじまない」とする声への配慮もあった。政策協定などは結んでいない。
藤原書記長は「きれいな形で(共闘に)臨めなかったというのはある」と悔いを率直に吐露しつつも、「前回参院選の神奈川選挙区は複数区だったため、実質的には初めての共闘。一緒に戦う経験の中で(共闘の)枠組みが広がり、新たな信頼関係をつくりたい」と今後の発展に期待した。
反省踏まえ
「市民の市長をつくる会」は1978年に当時の飛鳥田一雄市長が社会党委員長就任のために任期途中で辞職した市長選を機に、「政党の都合で左右されない市民の市長を」と設立。以来、独自候補を擁立し、共産党が推薦してきた。
同会が独自候補を出さなかったのは2009年当時の中田宏市長の辞職による市長選だけで、独自候補以外を支持するのは同会創設以来初めて。「独自候補を出さないのも協力の一つ」と関係者は明かす。
同会を構成する約20の市民団体には中学校給食実現を目指す市民団体が多く、中には自校調理など特定の方式にこだわる声もあった。だが「形式にこだわって結果的に大差で敗北してきた。反省を踏まえ、今回はカジノ反対と中学校給食という市民の要求の実現を優先させ、勝利にこだわりたい」と同会の菅野隆雄事務局長は話している。
同市長選には、自民、公明両党が推薦する現職の林文子氏(71)と、元衆院議員の長島一由氏(50)も立候補を表明している。