
22人が立候補して全国でも屈指の激戦となっている参院選神奈川選挙区に、NHK党から4人の公認候補が出馬している。非改選の欠員補充を合わせ計5議席を争う同選挙区では、それぞれ2人を擁立した自民党や立憲民主党を上回り、同一政党として最も多い。ただ、選挙公報で党名を掲げているのは1人だけで、有権者からは困惑の声も聞かれる。N党の狙いは何なのか─。
「どうやったら持続可能な林業ができるか、考えてください」
6月30日、伊勢原駅前。N党新人の飯田富和子氏(53)は、首から提げたスピーカーを通して訴えを続けていた。時折、NHK問題についても言及するものの、演説の大半は自身が携わってきた国内林業の活性化や森林保全の推進が中心。通りかかった男性は「どこの党の候補者か分からなかった」と話した。
N党から出馬した新人4人のうち、党が「一丁目一番地の公約」に掲げるNHKの受信制度改革を中心に訴えているのは、重黒木優平氏(35)のみ。小野塚清仁氏(49)は政治参加の促進、橋本博幸氏(39)はマイノリティーへの支援を中心に訴えており、飯田氏を含めた3人の選挙公報に党名の記載はない。県選挙管理委員会によると、選挙公報や選挙ポスターに党派名を記載する義務はないという。
こうした戦略をN党関係者は「NHK問題を支持する票の分散を防ぎ、支持の裾野を広げるため」と説明。全国で2%以上の得票率を確保し、政党要件を維持する狙いからだという。