
「1億円あった売上高がほぼゼロ。人が移動しなくなると、こんなに仕事がなくなるのかと痛感した」
衆院選公示の翌日。航空部品や半導体製造を手掛けるコバヤシ精密工業(相模原市南区)の小林昌純社長(49)はそう話した。
金属や樹脂などの加工業を行ってきた同社は2008年のリーマン・ショック後、生き残りをかけて航空機産業へ参入した。政府の成長戦略に航空分野が掲げられたことも追い風となり、航空機部品の売上高は19年に1億円を突破。同社の売上全体の4割弱を占めるまでに成長した。
しかし、新型コロナウイルス禍で状況は一変した。米ボーイングが商用機の生産を停止し、国内の航空機部品メーカーでも生産の一時休止が相次いだ。同社への発注もなくなり、20年の売上高は前年比9割減。半導体製造部門が盛り返したことで会社を維持できているが、小林社長は「苦しいことには変わりはない」と話す。
大手の値下げ要求は1年ごと
経済の立て直しは衆院選の争点の一つだ。2019年の日本の労働生産性は先進7カ国で最も低く、その中でも中小企業の生産性はとりわけ低いと指摘されている。なぜか。
コロナ禍の現場から(5)苦境の中小製造業、技術守る政策を
「政府には中小企業を守る施策を求めたい」と話すコバヤシ精密工業の小林昌純社長=相模原市南区 [写真番号:875396]