猟友会のハンターが捕ったシカなどを流通用のジビエ肉としてハンター自ら加工できる処理施設「あしがらジビエ工房」(松田町)が、今秋の本格稼働に向けて準備を進めている。足柄上郡の5町(大井、中井、松田、山北、開成町)が共同出資し、県内加工場では初めての公設公営施設となる。県西部では鳥獣被害が拡大する一方、“手弁当”で活動する猟友会は高齢化が進んでおり、ジビエの商品化でハンターの担い手を確保とともに地域の新たな特産品として一石二鳥を狙う。
「今までそれぞれのやり方で山でさばいてきたハンターも多いかもしれないが、食べることは信用が第一。共通ルールで安全を確保をするのがまず大前提」
3月中旬、足柄上郡猟友会を対象にした食品衛生の講習会で、日本ジビエ振興協会の藤木徳彦代表理事は強調した。参加した12人はいずれもベテランハンターだが、自家消費のジビエには法令のルールがなく解体技術はそれぞれ“我流”。商品として出荷する場合は食品衛生法や国のガイドラインを守らなければならず、10月の施設稼働に向けてハンターの「意識改革」が最優先課題となっている。
あしがら工房は5町が約4千万円を投じて昨年12月に完成。当初計画は住環境の悪化を不安視した住民の反発から建設地変更を余儀なくされ、松田町では財政上の問題から議会が一時「事業凍結」を議決するなど曲折もあったが、地域への丁寧な説明などを経て完成にこぎ着けた。
鳥獣被害が急増
猟友会のジビエ加工に一役 足柄上郡5町が処理施設整備へ
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足柄上郡5町の共同で設立した「あしがらジビエ工房」=松田町内 [写真番号:1148341]
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販売用にシカ肉の部位を切り取る日本ジビエ振興協会の藤木徳彦代表理事(中央)=松田町内 [写真番号:1148342]