ヘイト団体が駅前街宣で在日コリアンを「寄生虫」とおとしめたヘイトスピーチについて川崎市は22日、市差別のない人権尊重のまちづくり条例の罰則規定に抵触しない、との見解を示した。文脈などから「外国の出身であることを理由にした言動」という要件を満たしていないと判断した。一方で「出身を理由とするものでなくても、差別的な意図で拡声器を使い、人を虫に例える発言をすることは許されない」と付言し、市の判断が反対解釈に悪用されないようくぎを刺した。
市議会決算審査特別委員会で堀添健氏(みらい)の質問に答えた。
ヘイト街宣は差別者集団「日の丸街宣倶楽部」が5日、小田急線新百合ケ丘駅前で行った。ヘイトスピーチ常習者の中澤忠男氏はマイクを手に、在日コリアンを名指しした上で「大韓民国人のまま日本に住み続け、日本にたかろうというのだ。彼らは寄生虫と言ってもよい」とおとしめた。
条例は、人以外のものに例えて侮辱することを罰則対象にするが、見解を求められた市人権・男女共同参画室は、前提として外国の出身を理由にした言動であることが必要と説明。前後の文脈から「特定国の出身者が何世代たっても帰化しないという行為について述べたもので、出身そのものを理由にしていない」と判断し、罰則規定には違反していないと結論付けた。
堀添氏が「直接出自に言及しなければ、何でも言えてしまいかねない」と疑問を呈したところ、同室担当者は条例の付帯決議を示して「(罰則規定で定めた)不当な差別的言動に当たらなければ、どんな差別的言動も許されるとの理解は誤り」との見解を改めて表明。あらゆる差別を禁じ、根絶をうたう条例の趣旨を強調した。(石橋 学)