12月の県内短観は、長期化する円高の影響が中小製造業の現場に及んできたことをうかがわせた。大手企業は、先行き不透明感が残るため、国内下請け企業への発注に慎重になっている。新規受注が大幅に落ち込んだ会社もあり、震災以降、ようやく上向いてきた中小企業のマインドが再び冷え込んでいる。
「正月休みは例年より長くなりそうだ」。プレス金型を製造販売する横浜市港北区の中小企業の社長は渋い表情で明かした。12月以降、電子部品メーカーからの受注が3割落ち込んだ。
震災以降に製造業を見舞ったサプライチェーン(部品供給網)の寸断。その反省から「できるだけの部品在庫を持とう」と考える大手取引先が相次いだため、下請け企業にも思わぬ“特需”が舞い込んだ。
だが、7月以降、在庫供給は一服。加えて円高も追い打ちをかけた。取引先は海外で競争力が保てないとする製品モデルの生産を終了。輸出製品も生産コストをかけないよう、設計変更の要求もあるという。社長は「先月はかなり良かったのに、非常に悪くなってきた」とこぼす。
自動車部品や半導体製造装置の部品加工を手掛ける茅ケ崎の企業。受注は先月比で1・5倍ペースで伸びているが、1月以降の受注は“白紙”という。社長は「円高が続いたことで、取引先企業が国内生産や設備投資に慎重になっている。経営判断ができていない」と話す。
ただ、自動車向けでは好調な企業もある。綾瀬のプレス部品メーカーは、11月に入って稼働率が100%を超えた。タイに進出する取引先数社が、洪水で現地調達できないため、同社に代替生産を依頼してきた。社長は「周辺の町工場も忙しい。2月まで受注が埋まっている」と説明する。
【】