メバチマグロの流通量が減少している。横浜市中央卸売市場本場の1月の入荷量(冷凍品、競り物)は約72トンと、16カ月連続で前年実績を割り込み続けている。国際的な漁獲規制の動きのほか、東京・築地市場への一極集中の動きが拍車を掛けている。
1月5日の初競り。同市場に上場されたメバチは前年比14%少ない約6トンにとどまった。仲卸業者八丁軍の石川健治さん(48)は「少なすぎて目利きの力を発揮しようがない」と残念がった。
流通量の減少は、水産資源保護という国際的な要請が背景にある。2008~09年のマグロ漁船は規制により減船、国による年間総漁獲量の制限もある。今年の日本の漁獲枠は約1万9千トンで、2000年初頭の7割の水準まで引き下げられる。
通関ベースの輸入価格は08年より12%上昇した。「この上昇分だけでも値上げしたいが、取引の流れもあり、なかなか踏み切れない」。マグロ卸売りで20年以上の経験がある横浜魚類の泉広彦・営業1部部長は頭を抱える。最終消費者の低価格志向は続く。卸売り段階でのメバチの売り上げは5年前より3割減少したという。
メバチの価格は高級種の本マグロの3割以下。スーパーなどで売られるすしネタや刺し身として最も庶民的なマグロの一つだ。スーパーの水産担当バイヤーは「メバチは特売用の人気商品。入荷が減ると売り上げへの影響が大きい」と危機感を抱く。「安いだけではお客が離れる。価格を上げれば売り上げが減る」という板挟み状態という。
築地市場への入荷量も減ってはいるが、世界最大の鮮魚市場には圧倒的に多くの業者が集まるため、高値も出やすくなる。森喜鮮魚店(横浜市神奈川区)の平賀賢明さん(58)は「このままでは、いいマグロがますます築地に流れる。われわれのような町の魚屋は、マグロの調達先を失うことにもなりかねない」と心配している。
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