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歓迎も消費回復望む 増税再延期で県内企業

経済 | 神奈川新聞 | 2016年6月2日(木) 15:56

 2017年4月に消費税率を10%に引き上げる-。そう公約に掲げ、再延期の条件に「リーマン・ショックや東日本大震災級の事態」を挙げていた安倍晋三首相が「世界経済の不透明感」などを理由に再び、税率引き上げを先送りした。多くの県内企業や経済団体は景気の落ち込みを回避できると歓迎するとともに、個人消費の回復を強く望んでいる。

 個人消費の動向が直接、業績に響く小売や流通業界。横浜高島屋(横浜市西区)を運営する高島屋の木本茂社長は4月の決算会見で「14年の増税から中間層の消費が十分に復調しておらず、来春に増税すれば非常に厳しい局面になる。景気の腰折れリスクにもなる点で慎重にみるべき」と再増税をけん制していた。

 今回、再延期が決まったことで冷蔵倉庫大手、ヨコレイ(同区)の西山敏彦社長は「消費者の購買意欲が一時的でもそがれずにすみ、安定した事業環境が望める」と歓迎する。

 ただ、個人消費が伸び悩む中、多くは冷静な受け止めだ。県内を中心にスーパーマーケット約50店舗を運営する相鉄ローゼン(同区)は「再増税で家計負担が増えないため、消費者の購買意欲が下がることはない」としつつ、「再増税後の消費の冷え込みがなくなるだけで、売り上げが伸びる要因にはならない」。

 チェーン展開する別の小売業の担当者は「再増税後の消費低迷の回避と(システム設定の変更など)軽減税率対応の出費を先送りできる」と再延期に一定の利点を見いだす一方、「給与のベースアップが行き渡らない中、増税が消費底上げの足かせになっている」と話す。軽減税率対応への多額の投資は先送りされるだけで、今後も頭痛の種だ。

 前回の増税時、駆け込み需要と反動減の影響が大きかった自動車販売。日産自動車の子会社、神奈川日産自動車(同区)の関口雄介社長は「駆け込み需要がなくなるのは正直、惜しい」と話す。ただ、「そもそも14年の消費増税からの回復も途上だった。もし再増税だったらますます購入して頂ける状況ではなくなる。安堵している」と明かす。

 県東部や東京都内で分譲マンションを展開する京浜急行電鉄(東京都港区)は、建設コストや人件費の増大で販売価格が上昇傾向にある中、市場の冷え込みに懸念を募らせていた。担当者は「再増税の先送りで冷え込みは当面回避されるのでは」と胸をなで下ろす。一方、創業40年のウスイホーム(横須賀市)の臼井伸二会長は「消費税率は2年半後には引き上げられる。低金利の今が売り込み時だ」と意気軒昂だ。

 個人消費が弱い現在の経済環境では、再延期はやむを得ないというのが大勢の見方。一方、社会保障制度の財源確保や財政の健全化は避けて通れない喫緊の課題でもある。高島屋の担当者は「税率引き上げが可能な環境となるよう効果的な景気対策を実行してほしい」。横浜商工会議所の上野孝会頭は「政府が総力を挙げ、時間的余裕を持って消費増税に耐え得る強靱(きょうじん)な経済環境の構築を望む」とコメントした。

景気 短期的にはプラス

浜銀総研・小泉主任研究員の評価




 浜銀総合研究所の小泉司主任研究員は、消費増税の再延期を「短期的には景気にプラス」と評価する。前回の増税以来、家計の消費マインドは盛り上がっておらず「個人消費が弱い中で再増税を行えば家計が実際に使えるお金が減り、消費マインドがますます冷え込む可能性がある。再延期は足元の景気の落ち込みをしばらくの間、先送りする」と理解を示す。

 個人消費の腰折れ回避の見通しが立てば「小売業などは駆け込み需要の反動減の懸念がなくなる」と分析。日用品よりも自動車や家具など耐久消費財を扱う企業には、特にプラスに働くとみる。

 一方、「軽減税率導入に伴うソフト開発などを手掛ける企業は計画中断を余儀なくされかねない」と予想。不動産業でも駆け込み需要を当て込んだ営業を展開している業者があり、影響を受けると見込む。

 鍵を握る個人消費の回復には「企業から家計に分配する雇用者報酬の回復が必要」と強調。現在はピークだった1990年代後半や2000年代はじめの水準には達していないという。再延期で長期的には財政健全化が遠のくため「足元の景気落ち込みが先送りされる間、構造改革をきちんと進めることが重要」とも訴える。

 小泉主任研究員が特に懸念するのが、安倍晋三首相が掲げた2019年10月という再増税の時期だ。「(翌20年の)東京五輪・パラリンピックの建設投資などが一段落し、景気後退の方向に進むことが懸念される。その時期に果たして再増税ができるのか」と指摘している。

 
 

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