
「正直、期待外れだ」。春節商戦の2月、前年は倍に近い伸びだった月間の外国人来店客数が前年比10%増に終わり、県内の小売店担当者は肩を落とした。
中国経済の減速により、インバウンド(訪日外国人客)需要は踊り場に向かうとの見方が強い。旅行大手のジェイティービー(JTB、東京都品川区)は2016年のインバウンドの数を前年比プラス19・0%と予測。15年のプラス47・2%から大幅に鈍るとみた。
日本は人口減少社会を迎え、国内市場は縮む。伸び続けたインバウンドの先行きも見通せない。そこで新たな外貨の獲得手段として注目を集めるのが、高度な診療を求めて他国に渡る「医療ツーリズム」だ。
医療大手の徳洲会グループは12年、湘南鎌倉総合病院(鎌倉市)に外国人患者の窓口となる国際医療支援室を立ち上げた。症状に合わせて全国66の系列病院を手配し、診療に必要な医療ビザの取得も支援する。
系列の心臓病専門医院・葉山ハートセンター(三浦郡葉山町)が昨年受け入れたのは3人の中国人患者。その1人である女性看護師=当時(59)=は地元で狭心症と診断され、冠動脈を施術した。しかし、治まらない背中の痛みに不安を覚え、評判を聞いた日本での再検査を決意した。
通訳を通じて伝えられた結果は「中国で受けた治療に間違いは無い」。胸をなで下ろした女性は、共に来日した20代の娘と人間ドックも受診。費用は総額30万円を超えた。滞在中に京都観光も楽しんだという。
同センター担当者は「受け入れが増えれば経営へのインパクトは大きい」と話す。鍵となるのがその診療費だ。医療ツーリズムの患者は自由診療に当たり、病院側が金額を決める。同センターでは通訳や診断書の翻訳も含めて「20割をいただく」。日本の健康保険加入者の負担が3割とするとその6倍以上の金額になる。それでもニーズはあり、今春にはインドネシア人患者が心臓バイパス手術を受ける予定という。
その一方、