JR東日本は来春をめどに、南武線武蔵溝ノ口駅(川崎市高津区)に自立型水素エネルギー供給システムを整備すると発表した。同システムは再生可能エネルギーと水素を活用することで二酸化炭素を全く排出しない“CO2フリー”で、同様のシステムを導入するのは鉄道事業者で初めてという。災害時には非常用電源として、帰宅困難者の一時滞在場所で使用する。
駅舎屋上に設置する太陽光パネル(設置面積200平方メートル)から供給される電力で水素を生産する。水素は上りホーム隣接部に設ける水素貯蔵タンクにため、燃料電池を使って発電し駅舎内の電源として活用する。
出力は3・5キロワット。タンクには2日分以上の水素を蓄えることが可能で、災害時は帰宅困難者が待機する改札内外のコンコースの照明の一部や旅客用トイレの電源に用い、平時は改札内コンコースの照明の一部として使用する。さらに太陽光発電の余剰分を活用するために蓄電池も併せて整備する。
南武線沿線のイメージアップや環境配慮型の取り組みなどを進める同社と川崎市の包括連携協定に基づく事業の一環で、システムは東芝製。JR東は、省エネや再生エネルギーなどの技術を駅に導入する活動「エコステ」を2012年から展開し、武蔵溝ノ口駅で6駅目となる。
同駅では水素活用システムに加え、照明のLED(発光ダイオード)化や壁面緑化、ホームに新設する待合スペースへの環境技術導入などを進め、二酸化炭素排出量の2割削減を目指すという。太陽光や水素の発電量を示す表示盤で「見える化」も図る。
同社の平野邦彦横浜支社長は24日の定例会見で「水素活用戦略を進める川崎市と一体となって二酸化炭素排出量の削減に努めたい」と述べ、1日16万人が乗降する武蔵溝ノ口駅で展開することによるアピール効果に期待を寄せた。